※十年後綱吉
最近、避けられている気がする。
それも、彼氏である綱吉に…
***
綱吉は、私の上司であり、ボンゴレ十代目であり、彼氏である。
世界一を誇るであろうマフィアのボスのパートナーが私でいいのかなんて不安はいつも持っている。でも、今一番の不安は、綱吉が私を避けているという事実だ。
ボスと部下では仕方ない所もあるかもしれないが、そうではない。明らかに作れるであろう一緒にいる時間にワザと仕事を入れて潰しているのだ。
それに気付いたのはつい最近。
あの日私は、綱吉に雲雀さんからの財団関係の書類で忙しいと言われたので、一人お茶をしていた。そこに偶然居合わせた雲雀さんにお茶を出した時に言われた。
「あの書類は別に急ぎじゃないよ」
時間が止まった気がした。
自分はマフィアの中でも察しが良い方だと思っていたが、これ程までに嫌な推測しか出来ない自分が憎くくなった。
やっぱり綱吉は私を避けている…
基本、私も綱吉もデスクワークだが、必要があれば前線に立つ。
命のやり取りをする世界で、愛しい存在がいることは、弱みであり、強みでもある。
こんな気持ちで前線に立てるわけがない。だから私は今、綱吉を執務室の扉の前で待ち伏せし、出てきたところを抑えた。
『綱吉、どうして私を避けるの?』
「は?何ふざけたこと言ってるんだよ…」
『ふざけてない。逃げないで答えて。ねぇ、どうして避けるの?』
あからさまに目を泳がせる綱吉は、一度も私の顔を見てくれなくて…
目すらも合わせたくないくらい、嫌なの?
『私を……嫌いに、なったの?』
「っ!そんな訳ないだろ!!」
私の肩を掴んで、そう叫ぶ綱吉は、どこか辛そうで…
何で、そんな顔をするの?
何が綱吉をそこ迄苦しめてるの?
じっと綱吉の目を見つめると、観念したのか、下を向いてポツリポツリと話し始めた。
「…時々、さ。おまえを、どこかに閉じ込めて、オレのことしか考えられないようにしたくなる時があるんだ。
……このままじゃ、おまえを傷つけると思った。
だから、少し距離を置けば、この狂った気持ちも落ち着いて、おまえとまた笑っていられると思って…」
ゆっくり上がる綱吉の視線と絡まる。
眉をハの字に力なく笑う綱吉。
「ははっ…ボンゴレのボスが、聞いて呆れるだろ?」
『……呆れないよ』
「っえ、」
『…だって、私のことを思っての行動だったんでしょ?』
「けどっ……こんな汚い支配欲、おまえに見せたくなくて……でも、結果的に、おまえを傷つけてたんだな。ほんと、ごめん…」
『謝る必要ないよ』
「え、」
驚く綱吉に、つい笑ってしまう。
ハニーブラウンの髪をそっと撫でる。
『だって、綱吉が私を嫌いじゃないってことがわかったし、むしろ、とっても愛されてるってわかったから…凄く嬉しいの。だから、謝ることなんて何も無いんだよ?』
「っ、」
『?どうしたの、綱よ…っん…ぁ』
頭を撫でていた手を突然取られたかと思うと、思い切り引き寄せられ、唇を奪われた。
どこか焦って貪るような苦しい口付け…けれど、綱吉の、優しい気持ちで溢れてる。
そっと離れる綱吉と私の間には、煌めく銀糸。それをそっと舐めとる綱吉に、ドキリとした。
「おまえのこと、絶対離してやらないから…」
そう言って笑った綱吉が、何よりも愛しくて…離せないのは、きっと私の方なのに…
End
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2014.10.06〜