Una linea di confine

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「ぐあぁ」

『ひゃあっ⁉』






食べられる‼とギュッと目を固く瞑った次の瞬間、頬をなんとも形容し難い触感と生温かさが襲う。



な・め・ら・れ・た‼



何にかって?
奥さん、聞いてくださる?
怪獣よ!怪獣‼
え、やーね、いくらなんでもゴジ●じゃないわよ〜
あんなのに舐められるって、一体どんな状きょ「自分を見失ってんな」





声と共にやってきた側頭部への衝撃で見失いかけてた(もはや見失っていた)自分を取り戻したなまえ。
しばらく呆然としたのは、もちろん不可抗力だ。






「『奥さん』とか言う年でもないだろ」

『いや、最近の子に言わせれば、私なんかおばさ……んん⁉』

「全然若いじゃねーか」

『あ、りがと…う?』






私なんかの年より、キミの年が気になる…
何故なら、今偉そうに話すこの人は、ビシッと黒いスーツを着こなしてはいるが、どう見ても赤ちゃんなのだ。
うん、やんごとない赤ちゃん。






『えっと…?』

「ちゃおっス」

『ちゃ、ちゃお…』



黒スーツの赤ちゃんは、ボルサリーノのつばを抑えながらヒラリとベッドに飛び乗ると、黄緑色のドライヤーをどこからか取り出し、なまえの上に鎮座する緑色の怪獣に向けた。






「やっぱしお前だったか、エンツィオ」

「くぁあ」






ブォオ…とドライヤーの音が大きくなるにつれ、どんどん小さくなっていくエンツィオと呼ばれたそれ。
気付くと、膝上にちょこんと乗るサイズになったわけで。






『え…なにこれ…』

「こいつはエンツィオっつてな。水を吸うとふやけて膨張するんだ」

『へ…へぇ…』




自分の膝上にいるカメをまじまじと見つめる。
これは怪獣ではなく、カメだということに安心するものの、赤ちゃんの話したことが理解しきれない。


水を吸った分だけ大きくなり、乾かせば、元のサイズに戻るーーそんなスポンジのようなカメがいてもいいのだろうか…。



浮かんでくる疑念を押し込み、なまえは周りを見渡してみる。


自分のいるベッド。机に椅子。
机の上には、倒れたコップが。そのせいか、床は水浸し…というより、少し濡れていた。




「(原因はこれか…)」

『ねぇ』




床を忌々しそうに見つめる赤ちゃんに、なまえは声をかける。





『キミは誰で、ここは一体…』




溢れ出そうになった疑問を、赤ちゃんの手によって制される。




「まぁ落ち着け、みょうじなまえ」

『な、んで…私の名前……』




咄嗟に身構える。そんななまえの行動には気にした風もなく、赤ちゃんはなまえに手を伸ばすと、そのまま頭を撫でてきた。

突然のことに肩をビクつかせたなまえだったが、それは、その手に嫌悪したのではなく、本当にただ驚いたから。

赤ちゃんもそのことには気付いているようで、一定のリズムで小さな手を動かし続けた。

その手のあたたかさは、心を落ち着かせるには、充分で。




「…落ち着いたみてーだな」

『はい…』




なまえの返事を聞いた赤ちゃんは、満足そうにニッと笑うと、そのまま話し始めた……




「オレの名はr「敵はここかっ!?」



嵐がやってきたもようです
雲行きが怪しいような気がするのは、私だけですか?



  ***
04に続く
  ***

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