Short Story

□俺がお前を好きなんだ、お前も俺を好きになれ
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俺がお前を好きなんだ、お前も俺を好きになれ







ザンザスさんのメイド…というより、皆さんの使用人になって、自分がどんな世界に片足を入れたか、わかってきた。

…いや、出来れば知りたくなかった…。
でも、会話の節々で何となーく、わかってはいた。それを決死の思いでスクアーロさんに聞いたところ、今更か?というか知らなかったのか?と言われたのは記憶に新しい。


元はと言えば、ザンザスに拉致られたのだから、知るはずないでしょうに!
…なんてもちろん言えませんでした。



ああ、何で突然こんなことを言ったのかというと…




「待って下さい、ザンザス様ー!」

「……」




猫撫で声でザンザスさんを追う、美しいブロンドの女性。
パッと見、無表情ながらも、無言で歩くザンザスさんからは、不機嫌オーラが。


ザンザスさんの地位を狙ってなのか、たまにああいう人が、ザンザスさんに擦り寄っているのを見かける。

相手のバックも、それなりの地位なので、あまり適当にあしらってはいけないらしい。


…私からしたら、あれはかなり適当な扱いに見える。それでも、スクアーロさん曰く、大分マシになったらしい。



こんな時は決まってザンザスさんの機嫌が頗る悪い。だから私は、そういう時は決まってザンザスさんをなるべく避けるようにしている。
触らぬ神に祟りなし…とは、まさにこの事じゃないだろうか。



……そうは思ってみても、やっぱり、ザンザスさんの隣に立つ女の人と自分を比べてはため息をついてしまうのだけれど。


箒を握り締めて、またため息をついてしまった。





「何だなまえ、元気がねぇぞぉ!」

『あ、スクアーロさん』





ちょうど良くというか、運悪くというか…スクアーロさんに見られてしまったようだ。





『その、仕事が少し上手く行かなくて…』





嘘も甚だしいな。
ここでの仕事はかなり慣れたというのに…でも、今の私には、言い訳なんて、それくらいしか思いつかなかった。


スクアーロさんは気にした風もなく、ニヤリと笑って私の肩に手を置いた。





「大切なのは気合いだ!」

『気合い…ですか』

「つーわけで、声に出していくぞ!…ゔぉぉおい!」

『…う、ぉぉぃ、?』





それは後に続け、という意味なのだろうか…


不安に思いながら、おずおずと後に続けて叫ぶと、どうやらそれで合っていたようだ。





「声が小さい!ゔぉぉおい!!」

『っ、うぉぉおい!』

「もっとだ!ぅお…


「るせぇ」
ドカッ!


ぉぉい…」

『え…』





スクアーロさんの雄叫びは、鈍い打撃音と聞き慣れた声と共に、途切れてしまった。
それと同時に、私の血の気がサッと引く。

反射的にその場から逃げようとするも、当然彼…ザンザスさんにかなうはずもなくて。

腕を引かれて、隅の部屋の中へと引き込まれる。

横たわるスクアーロさんの側に、カラン…と箒が落ちた。






「おいなまえ」

『っ、は、はい!』

「てめぇはカス鮫の何だ?」

『えと、何、と言われましても…』




今の状況にも、質問にも、私のキャパシティは軽くオーバーしている。

そのおかげで口も上手くまわらない。




『さっきのは…スクアーロさんはただ、元気のない、私を、励まそうとして、くださっただけで、あ、あの!』

「カス鮫が好きなのか?」

『い、いえ、まさか…!』

「フン、お前が誰を好いていようが、オレには関係ねぇが」

『え…』




焦る気持ちが一気に冷めた気分だった。


それって、振られたってことだよね?


そうだよね、あんな素敵な人じゃないと、釣り合うわけない、よね…


ゆっくり下を向いたつもりが、ザンザスさんに顎を掴まれ、一気に上を向かされる。





『え、あの、何を…』

「るせぇ…




オレがお前を好きなんだ、お前もオレを好きになれ」




その一言に、目の前がパッと開けた気がした。
胸の奥深くで、モヤモヤした黒いものが、全て解き放たれた感覚。それと同時に涙腺も緩んでいて…つい、ザンザスさんにしがみ付いた。





『もうとっくに、大好きです!!』

「……そうか」





そうつぶやくと、ザンザスさんは私の頭をそっと撫でてくれた。

暖かい腕に包まれ幸せに浸る私を、気が付いたスクアーロさんの絶叫が現実に引き戻し、羞恥心が襲ってきたせいで思い切りザンザスさんから離れるまで、あと少し……。

End
ーーーーーーー
その後スクアーロは再びザンザスによってボコ殴り確実ですねw

スクアーロのアレは、『DSゲーム/オレがボス!最強ファミリー大戦』のネタでした(笑)
この前、やっとシナリオクリアいたしまして…

2015.3.1

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