Short Story

□王子みたい
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王子みたい



※10年後?数年後!






『…遅い』

《知らねーよ、王子のせいじゃねーもん》

『あと五分で来ないなら、先に殺ってるから』

《はぁ?ふざけんなし、なまえの分際で王子の獲もnーブツンッ!!






通信機を一方的に切ると、自分の立つ木から5、600m程先の屋敷を見据えた。

あれが今回の任務のターゲット。最近ボンゴレ傘下に加入したファミリーだ。


何故私達ヴァリアーが新米ボンゴレ傘下を潰すのか。



きっかけは本当に些細なこと。



たまたま私があのファミリーについて調べていたら、たまたまヒットした情報。蓋を開けたら、まぁびっくり。ヤバイ薬にヤバイ人材派遣のオンパレードと来たもんだ。



あちらさんは必死になって証拠隠滅やらなんやらしてたみたいだけど、一つ見付ければ面白いことに、芋蔓式に出てきた。



ちゃんと確認してなかった訳じゃないけど、傘下に加入させたのは十代目。なのに、やっぱりやめます、とか今更言えない。

そんなことをしてみれば、あの世界一とも謳われるボンゴレファミリーともあろうボスがどうなるか…面目丸つぶれもいいところだ。


そ・こ・で♪


我等ヴァリアーの登場☆




『ベルくん、ざんね〜ん。時間切れ』





左右両方に装備したカイデックス製のサイ・ホルスター越しに愛用銃を確認する。




『Let's 暗殺タ〜イム♪……なんてね』




ニヒルな顔で同じ獲物を扱うヒットマンの口癖を真似て、勢い良く木から降り立った。









***






今回の1番の目的は、もちろんファミリーのボスの暗殺。




…ではなく、拘束だ。
まさかすぎて泣きたくなったのは言うまでもない。


どうやらファミリーの裏には黒幕がいると踏んでの任務らしい。非常にツライ。
サクッと頭に撃ち込みたい。


そんなイライラが募ってか、なるべく静かに、死傷者も少なくという本部との約束は果たしていない。でも、どうせベルと組んでる時点で、死傷者が少ないなんて無理だし。

ボスさんにたどり着く前に、つい、半壊くらいにまで追い詰めてしまったのだ。このレベルのファミリーのボスなら、まぁ、イケるっしょ。



…なんて思ってたのに。





「きっさま…よくも…よくも!」

『……』





そのターゲットであるボスさんに両腕を取られうつ伏せ状態。今にも頭撃ち抜かれそう。

うーん、どこで間違えた?

何て悠長に考えてたら襟首を掴まれた。その結果、うつ伏せ状態から初めて相手に顔が割れたわけだけど…





「…っ女、だと!?」





そう、あんたのファミリーは女一人に半壊状態にまで追い詰められたんだよ。

この仕事が凄く楽しく思える瞬間が、今。

たかが女一人に…という苦痛に満ちた顔を拝む瞬間。





「さぁ吐け!どこのファミリーの回し者だ!?」

『くっ…』




うつ伏せから仰向けにされた。ターゲットには一瞬の隙もなくてビックリ…というか、相手にしてきたこの人の部下が弱過ぎなのか。

口の中に拳銃を突っ込まれる。




「…まぁこの私を殺そうとした罪は重いぞ」





今乗ってるあなたが重いわ!

銃の安全装置が外されていない。私を舐めてるのか、自分に自信があるのか…

きっと両方。






「…こういう場合、女の口の割り方は相場が決まっている…恥辱を味わい、快楽に溺れる姿でも拝ませて貰おうか。その身体で罪の重さを知るがいいさ」





そう言いながらビリビリ私の服を破くということは、今回の襲撃を私の単独犯だと思っているのだろう。下手に動くよりは、相手して時間を稼ぐ方が多分利口…でもなぁ。女としてどうなんだろう?
まぁ、この世界にいる時点でね…。


後救いなのは、今回の作戦で着てきたものが、偶々隊服じゃなかったこと。あれお気に入りだから、破られたら泣く。



なんて現実逃避してる場合ではないけど…


下卑た笑いを浮かべたヤツが、私の首筋に近づくと、そのまま突っ伏した。



……え?



一行に動く気配はない。というか、さっきまで胸元を弄っていた手も止まっていて…





「いつまでそうしてる気だよ?」

『え…』

「しししっ。ターゲットに襲われかけてるとかマジ笑える」





なんて笑いつつも、こめかみに薄っすら筋が見えるベルだった。

なんか…怒ってる?

ベルは、意識の飛んだターゲットをすぐさま拘束し、私の上から軽く投げ飛ばすと、そいつの腹に蹴り込んだのが見えた。





「オレでさえなまえに手ェ出してねーのに…こいつゼッテーサボテンにして、ミンチにしてやる」





何かブツブツ言いながら蹴り続けているが、内容は距離があって聞き取れない。相当イライラしている模様。


…もしかして、私が先に乗り込んだから?

でもそれはベルがミッション開始時刻に遅れたのが悪いんだし。


一通り蹴って落ち着いたのか、ベルは未だに起き上がれないでいる私に手を差し伸べてきた。





「ほらよ。立てるか?」

『なんか…』

「ん、何?」

『ベルがさ…






王子みたい』

(ピンチに駆け付けてきたのはいいけど、もう少し早く来て欲しかった…)
(なになまえ、喧嘩売ってんの?コレでも全速力だし。それと、みたいじゃなくて、オレ王子なんだけど)
(そういえば、そうだったね)
(カッチーン)

End
ーーーーーーー

ベルの片想いはまだまだ続く←

2014.09.03

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