Short Story
□生きていく意味を失くした時
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生きていく意味を失くした時
『フランの生きていく意味って…何?』
作戦開始前。
ものすごく暇で仕方がなかったのを、なまえセンパイに訴えたら、さっきの台詞を返された。
いつもなまえセンパイのことを聞いても、『つまらない』だとか、『今は忙しいから今度ゆっくりね』とか言ってはぐらかしていたから、つい聞き入ってしまった。
元々、私に生きていく意味なんてなかった。
むしろ死を望まれる存在。
私は、この手で多くの命を奪ってきた。それが私の生き延びる方法であり、生きていると実感出来る瞬間だった…
母親がくれたのは、命と日本人としての名前。父親は知らない。
…違う。
私をこのイタリアの地に捨てた父親を忘れたいだけ。でも母は私に生きろと言った。
まぁ、フリーの殺し屋として活躍してたところを、ボンゴレの暗殺部隊に引き抜かれてると知られたら、どう思われるか…
そう言って笑った彼女は、長い黒髪を高い位置で括ると、立ち上がった。
この時既になまえセンパイは、これから起こることを、予知でもしていたのだろうか…
***
過去の中で、儚くも笑った彼女。今目を閉じて、浅く呼吸をして横になるなまえセンパイ。
イコールで結ぶには、難しいくらい、目の前のなまえセンパイは傷付いていた。
『…そこにいるの…フラン…?』
「…そーですー」
『そっか…』
「……」
寝ていると思いきや起きていたみたいだ。
なまえセンパイはゆっくりと目を開いて、ミーの方を向くけれど…視線が合うことに時間がかかった。
なまえセンパイは、視力という名の武器と、自由を失くした。先程思い出していた、ミーと組んだ作戦の時に…
治療にあたったオカマセンパイの話では、片方を完全に失明し、もう片方はかろうじて見える程度だという。今も全身麻痺に侵されている。なまえセンパイ自身の回復力により、両腕と上半身を動かすまでにはあるものの、回復の見込みはこの時代の技術を持ってしても、わからないそうだ。
なまえセンパイは、突入班と共に敵アジトへ。ミーはサポート班と共に撹乱作戦に出ていた。そのアジトというのも、毒ガスといった危険物質研究にあてられたもので、それ故にボンゴレの標的となった。なまえセンパイは、その試作段階にあった毒ガスにやられたという。
最後の悪足掻きに、敵に不意を突かれたのだ。
合流した時には、決着がついていた。
目をこするなまえセンパイ。少し痒いと言っていたあの時には、彼女はもう光を失っていたという。
気付いた時には、なまえセンパイの瞼に触れていた。こっちの瞳はもう、ミーを映さない…?
『油断していたんだと思う。私がまだまだ未熟だったってだけのこと…だからね…そんな顔、しないで』
「…そんな顔って、どんな顔ですかー?」
『…泣きそうな顔』
「してませんー」
『してるわ…』
「…見えてない、のに…何言ってるんですー?」
『そうね。見えてない…でも、わかるから』
「っ、」
なまえセンパイは、瞼を触っていたミーの手を外すと、そのまま自分の頬へもってきた。
『また、捨てられちゃうね…』
「なら、ミーが拾いますー」
『ぇ、』
「ミーがなまえセンパイを拾うんで。ご主人様はあのボスじゃなく、ミーになるんです。だからっ…仕事から手を引いて、ミーのものになってください…」
もう片方の頬にも手を添えると、なまえセンパイがその手首をキュッと握った。手の甲を冷たい雫が伝う。
『…フラン』
「分かってると思いますけど、生業が生業なんで、なまえセンパイを絶対に幸せにするなんていえませんがー…ミーの為に…生きてください。いっときますけどこれ、決定事項なんでー、拒否権はありませんからー」
『バカフラン…っ、あり、がと…』
「……いーえー」
バカなのはどっちですか、なまえセンパイ。
あのボスが…あの変態集団がセンパイを捨てるはずないのに。
でも、やっぱりミー一人のものにしたいんで…
生きていく意味を失くした時
生きなければならない理由を与えられた
End
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例え光を失くしても、新たな希望に出会う…的な
タイトルは「秋桜」様よりお借りしました。
2014.09.02