Short Story
□たった今、俺が決めた
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公園から引き摺られるように乗せられたのは、黒塗りの高級車だった。
……これって、誘拐?
車で揺られること数十分。
私は声を出すこともなく、この男の人に付いて来た。あーあ、知らない人に付いて行ったらいけないなんて、今時小学生でもちゃんと守ってる。
というか、そもそも声なんか出せない…
この人、めっちゃ怖いんですけど…!!
何度か勇気を振り絞って声かけをしてみた。けど、やっと知り得た情報は"ザンザス"という名前のみ。
それ以降、私が口を開いた瞬間ギロッと思いきり睨んでくるザンザスさんの赤い瞳と纏うオーラは、なにも聞くなと言わんばかり。
「おりろ」
『っ、は、はい!!』
どうやら目的地はここみたい……って、何ここ!?
周りをみれば、キラキラしたネオンにカップルばかりの光景…
そして目の前には、ザ・高級ホテル。
この人、本当に何者??
「なにボケっと突っ立ってやがる…」
『、すみません!』
え、この流れって、かなり危険な感じ?女として。
いやでもこの人、かなりイケメンだし…って、いま何を考えたのよ私ぃ!!
車の中で、既に私はザンザスさんには勝てないことくらい直ぐに理解していた。
それに、パッと見は怖い人だけど…
『あ…』
「……」
やっと動きかけた足は、思考によってまた止まっていた。
ふと右手に感じた暖かみに思わず声を出してしまった。
力強い手…だけど、痛いってわけじゃない。頼もしくって、優しい手。
そのままザンザスさんはゆっくり私の手を引いて歩き始めた。
***
ザンザスさんに連れてかれた部屋は、このホテルの最上階。足を踏み入れたのは、所謂VIPルームだった。
一般庶民の私なんかが入れるはずもない部屋に、感嘆の溜息をついた。
何時の間にかザンザスさんは大きな1人用のイスに足を組んで座っていた。その姿はまるで、王様みたいだなと素直にそう思えた。
「てめえもサッサと座れ」
『は、はい!』
ーーーバァンッ!!!
ザンザスさんのお許し(?)も出たことだし、私はフワフワなソファを堪能したいがために腰掛けようと肘掛けに触れ、勢いよく飛び込もうとしたものの、突然開いた扉に驚き元の体制に戻った。
ズカズカ部屋に入ってきたのは、銀髪で長髪(私より長くて綺麗かも…)の男の人だった。
ザンザスさんは気にした風もなく相変わらずドカリとソファに座り込んでお酒を飲んでいた。
そんなザンザスさんの様子を確認したらしい銀髪さんは舌打ちをすると、何か言おうと足を進めた途中で私と目が合ったわけで…目が点とは、まさにこのことだろうなぁ…
「ゔぉぉい、ザンザス、何だその女はよぉ!」
『あ、あの!みょうじなまえといいます!!』
「そういう意味で聞いてんじゃねぇ!なにサラッと名乗ってんだお前は!何者なのかってことを聞いてんだ!」
予想以上の気迫と声の大きさ(8割方こっち)に負けて、つい名乗ってしまった。
でも、何者かなんて言われても、なんて答えればいい?
公園で拉致られて来た者です…とか?
すると、何を思ったのかお酒の入ったグラスをテーブルに置くと、ザンザスさんは一言。
「コイツは俺の使用人…メイドのなまえだ」
たった今、俺が決めた
わたわたする私の思考を止めるには、充分だった。
これからどうなるのか、先が見えません…
End
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ザンザスさんで続編です〜♪
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