Short Story
□お前の気持ちなんざ知るかよ
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見上げてみれば、塗りつぶしたみたいな黒の間に、白が入り混じっていた。綿菓子にも見えるそれは、人々にとっては"奇跡"でも、今の私にとっては"邪魔"でしかなくて。
空の星達の輝きが霞んで見えるのは、白い奇跡が瞼の中でとけてるせいで、心がギュゥッと締め付けられるように痛いのは、寒いからだと思い込もうとする私は、どれほど滑稽なんだろう。
『ハァ…』
吐き出した息は降り注いでくる白と同化して、心と同じくらいの冷たさを持つ風は、容赦なく吹き付けてくる。
事象全てが、彼氏に振られた私を嘲笑っているように見えて……
それはさすがに大袈裟だと人は言うかもしれないけど、私とったら大問題だから仕方ない。
だって、クリスマスなんて、いかにも恋人のための(本来の意味は違うけど)が迫っているこの12月に振るとか、どういうことよ?
"本当は、もっと早く別れたかったんだけどな…"
別に私は地獄耳ってわけではないけど、そのつぶやきはバッチリ聞こえた。
だから、昼ドラさながらにファミレスで奴の頭に水をかけて、勢いそのままにこの公園に駆け込んで、ベンチに座って数時間泣き腫らした私は悪くない…と、思う。
『…帰ろ』
顔を上げて立ち上がった瞬間、電灯の下に立つ人の存在に気付いた。
うそ、あの人いつからいたの?
「…おい」
『ご、ごめんなさいっ』
距離があるけれど、たった二人の公園ではもちろんその声は届いた。
私ってば、ガン見しちゃってたよね?そりゃぁ、気分悪くするよね?
そう思い、頭を下げてそそくさとその人の横を通りすぎた。
「来い」
『え、あの…?』
ことはなかった。
何故か進行方向は急転回。
気付けば、がっしりとした手に引っ張られていた。
『は、はなしてくださ…』
「るせぇ」
お前の気持ちなんざ知るかよ
わかったらとっとと歩け。そう言われて掴まれた腕が熱く感じるのは、この寒空の下で久しぶりに感じた自分以外の温もりだったからだと、やっぱり私は思い込もうとする。
End
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この人に捕まったら、逃げられませんよね(ーー;)
タイトルは『確かに恋だった』〜横暴な彼〜からお借りしました。
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