Short Story

□可愛さ見たさに
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高校生になって、初めての地での生活に慣れて数ヶ月。

これ迄の人生で初めて、恋人…所謂彼氏という存在が出来た。







私の彼氏、ツナこと沢田綱吉はこの並盛高校の人気者である。


カッコ良くて、優しくて(たまに黒いけど…)、頭も良くて、スポーツ万能…まさに文武両道な完璧人間。

そう思ってたのに、私はツナの全てを知らなかった。









『ねえ、花。本当にツナは中学生の時に"ダメツナ"なんて呼ばれてたの?』





しかも、そんなツナが中学にかよい続けた理由が、好きな子を見るためだったらしい、とかなんとか。





『ダメなとこなんか見たことないよ…私には気を許しきれてないってことなのかな?彼女なのに?』

「別に好きな男のダメなとこなんか、見なくていいじゃない。むしろ見たくないわよ、幻滅して終わりよ?」

『そんなことないよ!ツナがダメダメとか、可愛いだけだよ!!彼女としては、かなり見たい!!』

「(結局ノロケ話じゃない)なら、嫉妬でもさせてやりなよ?」

『嫉妬?』

「男の嫉妬は見苦しいなんて言うけど、むしろ愛されてるって気がしない?沢田のことだから、テンパってくれるわよ〜」

『嫉妬…かぁ』





この間、デート先でツナと同中だったという男の子たちと会った。

中学が違ったから、ツナの知らない一面が見られるかもと最初はウキウキしてた。けれど、あまりにもツナのことを知らなさ過ぎた。

だって、今のツナからじゃ想像もつかない話ばかりで…



そこで、ツナと同中兼私の親友(って信じてる)の花にお弁当をつつきながら(いつもはツナとだけど、今日は頼み込んで獄寺くん達と食べてもらってる)相談を持ち掛けたわけだけど…案の定というか。

聞きたいようで聞きたくない話が沢山出てきた。ダウンしそう…

それにいつも私が嫉妬しっぱなしだから、もしツナが嫉妬してくれたら嬉しいと思う。ツナも私が好きなんだなって、私だけがツナを好きなんじゃないんだなって、そう思えるはずだから。

だけど、もし嫉妬してくれなかったら?

実はまだ、中学の頃の恋を引きずってて、私はただの代役に過ぎなかったら?





「随分と面白い話してるね?」

『き、恭弥さん!!?どうしてここに!?』

「なまえに会いに」

『えっ!』

「今月の報告書だしてないの、なまえだけだよ」

『わわっ、ごめんなさい!!』





紙パックのレモンティーにさしたストローを咥えたまま、負の感情のスパイラル突入しそうだったのを止めたのは、響きのいいテノールの声だった。

我らが風紀委員会委員長、雲雀恭弥さん。

私の所属する生活委員会は、風紀委員会直属の委員会。(委員会が委員会に属してることについては、だれも突っ込まない。というより、突っ込めない!!)

ジャンケンで負けた結果、生活委員会に入ったことはもちろん恭弥さんには秘密!

生活委員会は毎月、クラス内での遅刻者数や規律違反者数(どちらも実名つきで)などを風紀委員会に報告書を提出する義務があったりする。

朝のHR制ではないから、1限ギリギリでも遅刻にはならないはずだと思うのは、この並盛高校においてはかなり甘い考えな人だと言われるけれど、私自身甘い人間なので実際より少ない数を報告してる。(さすがにゼロとは報告しない!)

バレてるはずなのにお咎めを受けたこともないし、むしろ初対面で"僕のことは恭弥って呼んでね、なまえ"って言われたぐらいだし、"なまえに会いに"って言われた瞬間、"やっぱり恭弥さん、私のこと好きなんじゃ!?"って自惚れた私、爆ぜればいいのに。(完全に浮気じゃん…)









「ねえ、なまえ…協力してあげる」

『はい、今日中に提出しま…え?』




思わず口を開いたまま見上げると、口角を薄っすらと上げて笑う恭弥さんが。(羨ましいくらい綺麗な顔!)




『協力って…どうして?』

「……あの草食動物と一戦、交えたいから」





さすがバトルマニアですね!とは、言えなかった。キラキラ(ギラギラ?)輝く瞳は、おもちゃを見つけた子供のようで少し可愛かったから。(やっぱり浮気…?)





「ほら来たよ」

『え、っ!?』






恭弥さんの指指す方を見ると、ツナ特有のハニーブラウンの髪が恭弥さんのドアップの後ろに見えた。

…ど、アップ??




『き、恭弥さ…』

「なまえ…」





名前を呼ぼうとした瞬間、柔らかい感触が唇に…


くちびる、に…?





「本当だ…"キスの味はレモンの味"…なまえはどうだった?」

『!!?恭弥さん、なにっ、きゃ!?』






何するんですか!!と叫ぶことは叶わなかった。だって、体が宙に浮いたから。





『ふぇ!?』

「黒川、次の授業だけど…」

「任せといて、さっさと行きなさいよ」





ちょっと、親友ぅぅぅぅぅっ!!?


こうして私は、真っ黒いオーラを放つツナに引き摺られるようにして屋上に連れられてしまいました、まる!









『あの、つ、綱吉、さん?』

「なに?」

『っ、怒って、らっしゃる?』

「怒られるようなことでもしたわけ?」

『…だって見えた、よね?私と恭弥さんが、その…キ、キス、したの』

「、」

『もしかして…嫉妬、してくれた…?』

「してない







…わけないだろ」

『え、』

「、かなり動揺した。なまえがオレから離れたらどうしよう…オレはなまえが好きだけど、本当はなまえはオレのこと嫌いなんじゃないかって。一瞬だったけど、かなり嫌な考えだけが浮かんだ……それに、雲雀さんは本気でなまえのこと……」






ツナの全てを知りたいと思ってた。
だって私、ツナの彼女だし。それに、どんなツナでも好きになる自信があるから。

だけど、




『私…ツナが好きだよ!ツナだけが好き!!』

「オレはなまえだけを愛してるけど?」

『っ、!!』





私には目の前のツナで十分。









可愛さ見たさに



(それにしても、よくもまぁ、面白いことしてくれたね?)
(え…)
(覚悟……してるよね?)




…結果、恐怖を見ました。


End

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