Short Story
□この気持ちが恋ならば
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※可愛いツナくんは、いないよ?
※文句は、受け付けないよ?
※OK?
『山本くん、カッコいいなぁ~』
「なまえ、さっきからうるさい」
『ねえ、ツナ。どうしたら山本くんは振り向いてくれると思う?』
「名前を呼んだら」
『そーゆー意味じゃなくて!!』
休み時間くらい静かに過ごしたいというオレの考えを、ことごとく潰してきたなまえは、さっきから山本を見つめてはため息ばかりついていた。
正直言ってウザい。
兎に角煩い。
というか…
「何でオレに聞くんだよ」
『確かに…京子の前じゃ、恥ずかしくて黒い性格が引っ込むツナなんかに聞いたって、何の意味もなかったね!』
「…なまえ、オレに喧嘩売りたかったんなら、素直に言ってくれればよかったのに」
『滅相もないです!!!』
これでもかというくらい膨らんでいた頬を一瞬にして引き攣らせたなまえは、しょっちゅう隣の席から山本について聞いてくる。鬱陶しい。ほんと、オレに喧嘩売ってんじゃないの?ってくらいに。
この間なんて、軽くなまえをスルーしてやったら、報復だとでも言わんばかりにオレのノートの余白に"山本カッコいい"とか書いてきた。しかもネームペンで。
オレ、そういう趣味の人間じゃないから。
今度無視した時は机に書いてやる!!って勝ち誇ったような顔で偉そうに言ってたなまえを思い出したオレは、とりあえず話をもとに戻してやる。
「それで、振り向いてもらう方法だけど…」
『え、いい案があるの!?』
「ようは、なまえを女として見てもらえばいいんだよ」
『…私、女だけど』
「一応、な…」
『グスッ…ひどいよ、ツッくん!』
「ツッくん言うな。…手っ取り早い話が、デートするんだ」
『でぇと??』
まるで、単語そのものを初めて聞いたみたいな顔で復唱したなまえは頭を傾げた。
遠くから"可愛い…"なんてクラスメイトAの言葉は聞かなかったことにしよう。
アホ面が余計アホになっただけだろ?
「そこでなまえのあるのかどうかも怪しい女らしい魅力でも見せれば、0.1ミリくらいなら、なまえを意識してくれるかもな」
『ツナ、私を貶して楽しい?』
「それなりに?」
『……じゃあ、京子も誘ってWデートね!』
「ちょっと待て。それはつまり、」
『ツナも一緒♪』
オレの言葉にどんどんむくれるなまえは、見ていて飽きない。たまに生意気言って反抗してくるなまえだが、オレに勝てるはずもなくて。
さて次はどうしようかと考えていた矢先、何かいいことを思いついたと言いたそうな表情で、このアホなまえは爆弾ともとれる発言を投下しやがった。
「…オレがいたら、告白出来ないだろ?」
『告白出来なくてウジウジしてるのは、ツナの方でしょ?それに私は告白なんかしない…というか、付き合いたいとは思ってないし』
「は?」
『や、確かに、付き合えたらいいなとは思うけど…』
「けど?」
ウジウジしてるとか、余計なこと言ってんじゃねえよ。振り向かせる=告白する、じゃないのかよ?
そう言おうとしたが、喉につっかえて言えなかった。
いやいや、それよりも何言ってんだ、なまえは?
好きな奴がいたら、誰だってそいつを自分のものにしたいと思うのが理ってものだろ?
どんな手を使ってでもこの腕の中に閉じ込めたい…そう思うだろ?
なのに…
『あの笑顔を少しでも見られればそれでいいっていうか、許されるなら、隣で見ていたいっていうか……あぁでも、一緒にいたらきっと幸せ過ぎて、溶けちゃうかも!』
「……」
バカななまえ…
お前がそんなことを、そんな笑顔で言わなければ…
オレがこの気持ちに気付くなんてことあるはずなかったのに。
なまえを見て、"欲しい"なんて…
山本が、"羨ましい"なんて…
まぁ、気付いたからには、容赦はしないけど?
帰ったら1人で作戦会議…その前に、クラスメイトAを絞めないとな。
なまえには悪いけど、
この気持ちが恋ならば
なまえのその山本への気持ちを、オレに向けるまでだしね。
((っ!!…ツナの方から悪寒…!?))
(クスクス…なまえ、どうかした?)
(べ、つに。何も…)
(ふーん、そう?)
End