Short Story
□流される
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茜指す放課後の教室に、読書にいそしむ女の子が一人。
その子の隣の席にいそいそと座りこみ、その横顔を見つめる男の子が一人。女の子を見つめるその姿は、どこか不機嫌そう。
そんな男の子の様子に気づくはずもなく、女の子はもくもくと読書を続けている。
「なあ、なまえ」
『…何、犬』
「…キス…してもい?」
『……』
「なまえ?」
『…何で?めんどい』
「めんどいって、なんだびょん!柿ピーかよ!!」
『柿ピー…?いいよね、柿ピー。ピーナッツが』
「そっちじゃないっての!!」
『?違うの?…折角柿ピーあげようかと思ってたのに……ピーナッツ以外』
「ふざけるなびょん」
『仕方ないな。ガムあげる』
「!!!」
そう言って、読んでいた本を閉じると、机の横にかけていたカバンをあけて探る女の子…なまえを男の子…犬は目を見開いて見つめていた。
『何味がいい?グレープ、グリーンアップル、ラムネ、パイナップル、イチゴ…どれがいい?』
「……」
『犬…?』
「っ、ぜ、全部もらうびょん!!」
『ふふっ、ほんと、仕方ないな……はい』
「さ、サンキュー」
『いーえ』
「…ところでさぁ…」
『ん?』
「オレら……何の話してたんらっけ?」
『……さぁ?』
流される
話しも視線も嫉妬も
(…帰ろっか)
(駄菓子屋によってくびょん!)
(ほ、本気…?)
End