Short Story
□かなわない
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3時限目の終わった休み時間。私は毎日の如く、詩穂の席に遊びに来ていた。もちろん
、詩穂とお喋りしたいのもあるけど、1番の目的は別。
あのハニーブラウンの髪を後ろから眺めること!
私にとって、詩穂の席はまさにベストポジション!!
ただ、今日はいつもと違う気持ちで眺めてたからかな。
私の目には、いつもと違う光景が写り込んでしまった。
『あ、』
「どした、なまえ?」
『う、ううん、何でもな…』
「ああ、あそこにいるの、沢田か」
『っ!』
「そんで、アイツの隣にいるのはマドンナの笹川さんか…沢田のやつ、顔真っ赤じゃん…って、ゴメンなまえ!」
『いいよ、大丈夫…』
「……」
全然大丈夫なんかじゃないってことぐらい、詩穂にはバレてる。
だって私、笑えてない…
笑いたいのに、泣きたい…
「ねえ、なまえ。やっぱりあいつはやめなよ」
『……』
「なまえの気持ちはわかってる。でも、沢田は」
『笹川さんが好き…でしょ?…笹川さん、可愛いもんね。沢田くんが好きになっちゃうのも、仕方ないよ…でも、言うって決めてたから』
「なまえ…」
『ありがと、詩穂……ほら、授業始まっちゃうから、戻るね!』
学校のマドンナである笹川さんにかなうはずもない。
わかってる。けど、私のこの気持ちは、私自身にも止められなくて。
自分の席に戻る前に、笹川さんが自分の席に行ったのを見計らって沢田くんの席に寄る。
『さ、沢田くん!』
「みょうじさん、なに?」
『放課後、ちょっといいかな…?』
「あ、うん、いいよ」
『ありがとう』
私は今日、止められない自分のこの気持ちに、自分の手で終止符を打つ。
沢田くんの言葉を利用する形になるけど…
どれほど自分を傷つけるかわかってるけれど……
「みょうじさん、どうしたの?」
『ちょっと、聞いてほしいことがあって…』
「聞いてほしいこと?」
放課後の静かな教室に二人きり。
これが、世界の全てだったら…
このまま、時間が止まったら…
なんて、非科学的なことを願う私は、贅沢者ですか?
もう少し、この時間に浸っていたいけれど、悪あがきは今日限りで止めるって決めてたから。
『私ね…
ずっと…
沢田くんのことが…好きでした!!』
「え、っ…ええ!?」
『私の気持ちが迷惑だってことはわかってるから。でも、知っておいてほしかったの。話しはそれだけだから…じゃあ!』
「ま、待って、みょうじさん!」
『、』
言ったら直ぐにでも教室から出るつもりだった。だって、目の前に好きな人がいるのに…
想いが届かない辛さに、堪えられるほど、私は強くない。
それなのに、神様は私に、逃げることも許してくれないの?
「今のは、本当?」
『…うん、私の気持ち…沢田くんが好き、だったの』
「今は…好きじゃない…ってこと?」
『……』
大好きだよ、大好き!
何も考えないで叫べたらいいのに…
「みょうじさんは、オレのこと嫌いなの…?」
『……』
嫌いって、ウソでも言えたら、楽になれる?
ジワジワと涙がせり上がってくるのは、やっぱり私が弱いから?
『き、きら…』
「オレは…みょうじさんが好きだよ」
『、え?』
嫌いの言葉は、外へ出ることを許されずに、私の中に戻ってきた。
沢田くんからの好きの言葉で…
「す、好きなんだ…みょうじさんを…」
『う、ウソ…だって、沢田くんは笹川さんのこと』
「ウソなんかじゃないよ。オレは、みょうじさんが…
なまえが好き。大好きだよ」
ああ、もう…
かなわない
あなたの笑顔に勝てるはずもなくて…
いとも簡単に悲しみの涙は、喜びの涙に変わった。
(でも、笹川さんの前で真っ赤だったよね?)
(見てたの!?)
(うん。…やっぱり、笹川さんのこと)
(違うよ!…実は、なまえが好きだってことが、バレちゃって…追求されたというか、なんと言うか…)
((本当、笹川さんにはかなわない…!!))
End
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笹川さん、黒かったんですか…?
綱吉さんをピュアに書いた結果なのか…?
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