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□残念ながらべた惚れ
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残念ながらべた惚れ
放課後スグの屋上には、委員会の関係上、雲雀恭弥はいない。それは生徒の大半が知っている事実。
その為、“放課後スグに屋上に来て”というのは、ある意味、もう告白したも同然だった。
ただ、やはりそのことを知らない人がいるのもまた事実。
例えば…
「オレ、ずっと前からみょうじのことが好きだったんだ。だから、オレと付き合ってください!」
例えばそう、たった今告白された私とか。
屋上=あの人のテリトリーとしか考えていなかった私にとって、告白されるなんて思ってもいなかった。
“話したいことがある”と教室から連れて来られたのがここで。
あまりに真剣な瞳を向けられたからだろうか。一瞬見惚れた。あの人と同じ黒髪で、同じ漆黒の瞳を。
でも、目の前のこの彼は、当然ながらあの人ではない。
あの人も、彼のように、誰かに愛を囁いたりしたことがあるのだろうか…?
『……ごめん、なさい』
自分の気持ちが届かない辛さ…それを知っているからこそ、拒否の言葉を紡ぐことは、いつか自分が言われるのではないかという恐怖からか、それとも罪悪感のせいか、うまく発することが出来なかった。
『気持ちは凄く嬉しかった。ありがとう。だけど、私…』
失礼だと分かっていても、目に映るのは、目の前の彼じゃない。
どうしても考えてしまうのは、違う人。
「…好きなヤツがいるのか?」
『……うん』
本当に申し訳なく思ってしまい、間が大きくなる。
「そっか……オレの方こそ、ありがとうな。話聞いてくれて。気持ちぶつけられて、スッキリした」
砕けちまったけどなぁ〜、と笑う彼に強いなと関心してしまう。
「…それじゃ、また明日!」
『……あ』
そう言って彼は笑顔で屋上を後にした。
鈍いとよく言われる私でも分かるような、貼り付けた笑顔で。
そうさせたのは私だと思うと、やっぱり胸がキリキリ痛む。
だけど、私…
残念ながらべた惚れ
今ここにはいない、あの人に
To be continue…