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□隠恋慕
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気がついたらボール持ってゴールの前。
気がついたらシュート投げて1本入ってる。



そんでまたシュート、と思ったら




「いつ来てもシュートしてばっかりですね〜」


突然声かけられて外した。


「な、なんだよ・・・」


声の元は体育館横の入口。
ジャージ着てガム食ってるオレンジ色のボブ。

「いやぁ、笠松先輩の勇姿でも見ようかと」

「そうかよ」


床にボールをついて深呼吸。
やべぇ、なんか緊張してねぇか。

意を決していざシュート。

枠をくるくる回ってなんとか入った。


「きゃー!かっこいいー!ユッキー!」



「うぜぇなその呼び方ァ!」

「いやーん・・・こわーい・・・」

普段、黄瀬に向かって飛んでいく声が俺に向かってると思うとなんか調子狂う。

ただでさえ俺は女子とまともにしゃべったことねぇのに、こんな声援浴びせられりゃ困惑する。

しかも勢いでうざいとか怒鳴っちまった。
しょぼんとなる顔が見えた瞬間に沸き上がる罪悪感。

「・・・いや、その・・・。悪ぃ・・・。」

ああもう、なんなんだよ。
そんな顔すんなよ困るだろうが。

「ユッキー男の子には風当たり強いもんな。知ってるよ・・・」


うわぁ、なんかマズイことしちまったよこれ。
近所付き合い長いからって調子乗った結果がこれだ。

クラスの女子よりはまだマシにしゃべれる。
ただ不器用なんだよ俺は。
黄瀬の扱い慣れてる感じからの俺だとかなり荒いんだよ。

「練習の邪魔してごめん俺帰るわ」

悲しそうな笑顔で俺を見る。


「待て陸」


口が動いた。
ボール投げ捨てた。
走った。
手をつかんでた。


流れる沈黙。
体育館の床を小さく叩くボールの音が破る。




「練習終わるまで待っとけ。一緒に帰んぞ」



無意識だった。
言い終わったあたりで我に返って自分で驚く。
なんてこと言ってんだ。


「じゃあ待ってる!・・・あーじゃなくて待ってます!」


満面の笑顔で返ってきたから報酬は完璧。
追加報酬の下校時独占の権利はもっと最高。

「ユッキーのかっくいいシュート、しっかり収めとくかんね」

「やめろ馬鹿恥ずかしい」

「携帯の準備万端だからいつでもOK」

「だから、やめろって」

表情がかわるうえに、動作付き。
無駄に動いて無駄に可愛いのがこいつ。

こんなん独占できんだ、黄瀬にも自慢できるかもしれねぇ。


「こっち向いてよユッキーちゃん!」

「黙って見てろっつーの!」


うるさいけどそれがいい。



あれ、もしかして橙島陸に恋してるとでも言うのか?



隠恋慕(カクレンボ)
(隠れた恋愛)

(みーつけた)
(みつかった、あのね、だいすき)
(・・・ばか、だいすき)



アフォス!
先輩ごめんね悪気はない

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