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□それが何とは知らない
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デカイ声を張り上げて、いつも俺のところにやってくる。
名前は蒼空と言う。
「おおおおおピッコロさんみっけ!」
「・・・喧しいぞ」
「まぁそう言うなって。
でさ、さっきな、悟空さが・・・」
なにかしら話題を持って、やってくる。
俺は毎回ちゃんと聞いてない。
ただ、嬉々として話し続ける蒼空の顔を見てるだけ。
それだけでも充分楽しい気がした。
「って聞いてんのかよー」
少し膨らんだ頬が愛らしく見えた。
そのせいで、少し笑ってしまった。
「今なんで笑ったんだよー!そんなに俺の顔変だったかよー」
「いいや、なんでもない」
「えー」
どうも納得のいかないのか、また頬と膨らませた。
どこまでも表情が変わるこいつのデコを軽く一つ押してやる。
「俺は修行に行くんでな。悪いが構ってやれん」
「またそれかよ。少しは休めよ。それで俺のおしゃべりに付き合え」
不機嫌そうな顔も可愛かった。
構ってやりたくなる感じがしてくる。
「また今度な」
飛んだ時に、後ろから「言ったからにはちゃんと実行しろよー!」と叫ばれた時にはそれを言われるのは何度目かと考えている自分がいる。
修行してる最中、上を見上げたら広がる水いろを見て思った。
蒼空の髪の色と似ている気がする。
今まで味わったことのない感覚が駆け巡る。
・・・お前の居ない空間は、なんだか寂しいな。
また会いたい気がしてきた。
それが何とは知らない
(あれ、いつも戻るのもっと遅くね?)
(・・・そうでもないが)
(あ、わかった。俺とおしゃべりしたかったんだろ)
(勘違いも甚だしい)
不思議と目で追ってるよ。
一緒に居ると楽しいよ。
それはきっと恋と言うんじゃないか。
そう誰かに言われるまで気がつかないのが彼。