.
□月のみぞ知る夜噺
1ページ/1ページ
「はァい、レイチェル」
「おや、こんな時間に来るなんて。
随分大胆な人ですね」
仕事も飽きて、ジグソーパズルのピースで遊んでいた時に、丁度彼女がやってきてくれました。
気まぐれに現れては、また気まぐれに消えていく。
机を挟んで向こう側、手を後ろで組みながら、ふんわりと微笑んでいた。
「やァねェ。疚しいことでも考えたのォ?
あたしは、ただおしゃべりがしたいだけなのよォ」
窓の枠から溢れてている月光に晒された、彩葉の顔。
ふんわりと微笑んでいたはずの笑顔が妖艶な笑顔に変わり、御陰で私の心を掴む。
「おしゃべり、ですか。
・・・私と話をすると言っても、何を話すんですか?
周防尊の自慢話や、そちらの人の話は聞きたくありませんが」
そこで彼女は悲しそうな顔をする。
先ほどの笑顔は、月が雲に隠れると共に消えた。
どうやら、その話をしにきたのでしょうけど、私には生憎興味はありません。
「そう・・・。じゃァ、仕方ないわねェ・・・」
ペタペタと窓へ向かい、手をかけた。
「興味がないのなら、仕方ないわァ。
お仕事の邪魔をしてしまったわねェ。」
画册に開けた窓から外へ出ようとしているらしい。
私は反射的に椅子から立ち上がり、彩葉の細い腕に手を伸ばしていて、
気がついた頃には掴んでいた。
「確かに、周防尊の話や、そちらの人の話には興味はないと言いました。ですが、私は小鳥遊彩葉そのものに興味があるので、居るだけで構いません。どうぞ、ゆっくりしていってください」
自分な無意識のうちに発していた言葉が、かなり恥ずかしいものだと理解するのにはそう時間はかからない。
何故なら、彩葉の顔が少し赤かった。
「・・・レイチェルも、
大胆だと思うのよねェ・・・・」
逸らされた瞳がとても女らしさを強調していた。
私が知っている女性の中で、最も愛らしい女性だと思ってます。
彼女の左手に、一つキスを落としてみる。
「おや、あなたも何か疚しいことでも考えましたか?」
「・・・意地悪よねェ」
困ったように笑う彩葉が可愛くて。
「あなたは可愛いと思いますよ」
「ほら、これよォ。これェ」
変わり続けるその表情。
全てを見終わる頃には、私たちはどうなっているでしょうね。
月のみぞ知る夜噺
(明日も来てくださいね)
(勿論、またおしゃべりしにお邪魔させていただくわァ)
オマケ
キスをしてみたい
「・・・キスでもする気ですか?
それなら、少し教えていただきたいのですが
誰が、どのようにキスをするのでしょうか」
「どうしてそんなに意地悪なのかしらねェ。
教えてあげるわァ。
宗像礼司が愛を込めたキスをするのよォ」
「誰にですか?」
「あらァ、あたしには見えない誰かにでもするのォ?
できたら、あたし。
小鳥遊彩葉にして欲しいわねェ」
「ふふ・・・。
あなたは、とても面白い人ですね。
わかりました。
彩葉、俺が愛を込めてキスをしてさしあげます」
そんな感じで焦らす室長。
しかし彩葉はあまり気にしてない。