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□月のみぞ知る夜噺
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「はァい、レイチェル」

「おや、こんな時間に来るなんて。

随分大胆な人ですね」

仕事も飽きて、ジグソーパズルのピースで遊んでいた時に、丁度彼女がやってきてくれました。

気まぐれに現れては、また気まぐれに消えていく。

机を挟んで向こう側、手を後ろで組みながら、ふんわりと微笑んでいた。


「やァねェ。疚しいことでも考えたのォ?
あたしは、ただおしゃべりがしたいだけなのよォ」

窓の枠から溢れてている月光に晒された、彩葉の顔。
ふんわりと微笑んでいたはずの笑顔が妖艶な笑顔に変わり、御陰で私の心を掴む。


「おしゃべり、ですか。
・・・私と話をすると言っても、何を話すんですか?
周防尊の自慢話や、そちらの人の話は聞きたくありませんが」


そこで彼女は悲しそうな顔をする。
先ほどの笑顔は、月が雲に隠れると共に消えた。

どうやら、その話をしにきたのでしょうけど、私には生憎興味はありません。


「そう・・・。じゃァ、仕方ないわねェ・・・」


ペタペタと窓へ向かい、手をかけた。


「興味がないのなら、仕方ないわァ。
お仕事の邪魔をしてしまったわねェ。」

画册に開けた窓から外へ出ようとしているらしい。
私は反射的に椅子から立ち上がり、彩葉の細い腕に手を伸ばしていて、

気がついた頃には掴んでいた。


「確かに、周防尊の話や、そちらの人の話には興味はないと言いました。ですが、私は小鳥遊彩葉そのものに興味があるので、居るだけで構いません。どうぞ、ゆっくりしていってください」

自分な無意識のうちに発していた言葉が、かなり恥ずかしいものだと理解するのにはそう時間はかからない。
何故なら、彩葉の顔が少し赤かった。



「・・・レイチェルも、

大胆だと思うのよねェ・・・・」

逸らされた瞳がとても女らしさを強調していた。
私が知っている女性の中で、最も愛らしい女性だと思ってます。

彼女の左手に、一つキスを落としてみる。


「おや、あなたも何か疚しいことでも考えましたか?」


「・・・意地悪よねェ」


困ったように笑う彩葉が可愛くて。


「あなたは可愛いと思いますよ」

「ほら、これよォ。これェ」



変わり続けるその表情。
全てを見終わる頃には、私たちはどうなっているでしょうね。



月のみぞ知る夜噺
(明日も来てくださいね)
(勿論、またおしゃべりしにお邪魔させていただくわァ)





オマケ


キスをしてみたい



「・・・キスでもする気ですか?

それなら、少し教えていただきたいのですが



誰が、どのようにキスをするのでしょうか」


「どうしてそんなに意地悪なのかしらねェ。

教えてあげるわァ。



宗像礼司が愛を込めたキスをするのよォ」

「誰にですか?」

「あらァ、あたしには見えない誰かにでもするのォ?

できたら、あたし。
小鳥遊彩葉にして欲しいわねェ」


「ふふ・・・。
あなたは、とても面白い人ですね。
わかりました。


彩葉、俺が愛を込めてキスをしてさしあげます」




そんな感じで焦らす室長。
しかし彩葉はあまり気にしてない。

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