過去拍手文

□ちやほやしたい
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「ダルいわー見回りとかダルい!!」

街中にも関わらずそう叫ぶのは真選組の隊服を着た
金髪ショートカットの無駄美人、司だった。

ポケットに手を突っ込みずかずかと道の真ん中をがに股で歩く司。

「あーぁ、何でこんな寒い日に見回りなんてしなくちゃいけないんだよ」

はぁ、と吐いたため息は白い息となって空に消えた。
マフラーは着けているものの、寒さは殆ど防げず、指の震えが止まらない。

「…………帰ろ」

屯所を出て10分もしていないのに、司はUターンして今まで来た道を再び歩きだした。

すると、キャーキャー、と公園の方から子供たちの騒がしい声がした。

何事かと思って公園まで行ってみれば、
複数の子供たちが一本の太い木の周りに群がっていた。

子供の群れまで近寄ると、子供たちは木を見上げていた。

司も釣られて木を見上げると何とそこには、
木に絡まった風船を必死に取ろうとしている沖田がいた。
しかし、もう少しという所で手が届かない。

いつもはやる気のない沖田が風船を取ろうと必死になっている。
司はしばしポカンとそれを見ていた。

そして、ついに沖田の手は風船に触れることが出来た。
沖田は身をのりだし思いきって風船と距離を縮めた。

その瞬間、


ボキッ

沖田が足を乗せていた枝が折れ沖田はバランスを崩してしまった。
沖田はそのまま落下してしまう。

子供たちからは、わぁ!と焦ったような声が上がる。

「お兄ちゃん大丈夫!?」

子供たちの中で目に涙を溜めていた女の子が沖田に近づき心配そうに尋ねる。

「ん…大丈夫」

幸運なことに、沖田が落ちたのは落ち葉がベッドのようになった場所だった。

「ほら、手ェ離すんじゃねぇぞ」

沖田は自分の手にあった風船を笑顔でその女の子に差し出す。
それも、司が見たことないような優しい笑顔で。

女の子の顔はぱぁと明るくなる。

「ありがとうっ!」

女の子は風船を受け取ると「ばいばーい!」と手を振って何処かへ行ってしまった。
他の子供たちも「風船取れたねー」「凄いねー」と口々にしながら何処かへ行ってしまう。

「ふぅ…」

沖田は疲れたのか大きく息を吐く。

じー。

と、音がするくらいの視線を感じた沖田はそちらの方に目を向けた。

「司…」

そこには、穴が空くんじゃないかというくらい目を見開いた司がいた。

「何だよ…、お前何時からいたんだよ」

沖田は問うが、司は目を見開いたままピクリとも動かない。

しびれを切らした沖田は司を無視して屯所に帰ろうと立ち上がる。

すると、

「総悟っ!!何今の笑顔!?」

司が急に大声をあげる。

「急に大声を出すんじゃねぇ!!」

キラキラと目を輝かせ始めた司。

「あれは子供の風船が木に絡まったから総悟が取ってあげてたんだよね!?落ちちゃったのにあんな笑顔出来るなんて凄いよ!!」

「何言ってるか分かんねぇよ!もっとゆっくりしゃべりやがれ」

「えーと、だからですねぇ。総悟は偉いなぁって思ったの!」

「はぁ?」

司の言葉に総悟は首を傾げる。

「私だったら手が悴んでるから木なんて登りたくないし、
それに木から落ちたら絶対般若みたいな顔になっちゃうよ」

総悟凄い凄いと連呼する司。
総悟は普段あまり褒められたりしないことから少したじたじした。

「別に凄くなんかないだろィ!!」

「あー!総悟照れてる!?可愛いー」

「黙れ!!」

屯所に向かう沖田の後を司は追った。
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