長編
□第八訓
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「何だコレェェェェ!?」
真選組屯所に山崎の声が響き渡った。
「どうした山崎ィ!?」
「エロ本でも落ちてたアルか?
はっ、これだから山崎は」
山崎の悲鳴を聞き、上司の土方と神楽が駆けつける。
「違いますよ神楽隊長!!コレ見てください!!」
駆けつけた場所は屯所の門。
山崎は門の先を指差す。
土方と神楽も山崎が指差す方を見る。
「なっ………!?」
ポロリと土方が口にくわえていた煙草を落とす。
「おぉ!!」
キラキラと神楽が目を輝かせる。
そして、山崎が指差した先にはなんと
「ワン!」
段ボールの中に巨大な犬がいたのだ。
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「何なんだこの犬…」
とりあえず冷静さを取り戻した土方は巨大な犬をまじまじと見つめる。
「副長!何やら手紙が!!」
山崎が段ボールの中から手紙を取り出す。
手紙の内容はこの犬を飼ってくれ、とのこと。
「どこのどいつだか知らねェが、自分の犬を自分の都合で捨ててんじゃねぇよ。
そして真選組に押しつけんじゃねぇ」
ピクピクと眉を動かしながら言う土方。
地味にお怒りらしい。
「俺コイツ気に入ったアル!!
真選組で飼うヨロシ!!」
犬の上に跨がりながら意気揚々と神楽は言う。
だが、真選組で犬を飼う余裕などない。
ましてやこんな巨大な犬を飼うなんて天と地がひっくり返っても不可能だろう。
「定春ー、可愛いアルよ〜」
「おい、血出てんぞ」
犬を撫でている神楽の手は犬に噛まれて血まみれだ。
「しかも、定春って…飼うわけでもねぇんだから名前なんてつけんなよ」
「えぇ!?飼わないアルか!?」
「当たり前だ!!」
がーん、と効果音でもつくくらいショックを受ける神楽。
「じゃあ、副長。どうするんです?この犬」
「そうだな…あ。山崎ィ、俺が指定した場所にこの犬運べ」
何か思いだしたように土方は山崎に指示を出す。
「こんなときの為のあいつらだろ…」
少し心配なところはあるが、しょうがないと土方は自分で納得した。