長編

□第四訓
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「あ、土方さん」

ふと、名前を呼ばれ振り返る。

「お総…」

振り返った先にいたのは、土方の想い人でもある沖田総だった。

総は団子屋の前のベンチに座っていた。

土方は嬉しさで胸がいっぱいになる。

総は自分の隣をポンポンと叩き、土方が隣へ来るよう託す。
土方は戸惑ったが隣に座る。
しかし、相手を意識しすぎて変な距離で座ってしまう。
あまり意識しないように、と自分に言い聞かせ
何か話題を探す土方。

すると、偶然目に入った総の髪。

「俺があげたやつ、着けててくれてんだな」

総の左サイドに飾られるシュシュ。
それは土方がこないだ総にあげたものだった。

「似合いますか?」

髪を弄りながら首を傾げる総。

「…すごい似合ってる」

土方が照れながら素直な感想を言うと総は嬉しそうに微笑む。

「…でも、銀時は餓鬼みたいって言ったんですよ。
もう、ありえませんよね!」

「銀時?」

聞いたことない名前に眉を寄せる土方。

「あっ、私働いてる店のオーナーです」

総が補足するように言う。
(銀時って男だよな?呼びながしってことは仲良いのか?
まさか付き合ってる…いや、ないないないない)

違う意味で妄想が膨らむ土方。
土方が黙ったことにより沈黙に包まれる。

土方は沈黙を何とかしようと再び話題を探す。

「…そういえば土方さん。明日暇ですか?」

総が何か思い出したように言う。

「明日か…確か非番なはずだ」

土方も明日の仕事の予定を思い出しながら言う。

「じゃあ、明日一緒に映画見に行きません?」

え、と土方は驚く。

「実はチケットが2枚あるんですけど
一緒に行く人がいなくて…」

「行く行く行く!!絶対行く!!」

土方は身を乗り出しながら叫ぶように言う。

「よかったぁ。どうしても見たかったんですよ!
でも1人は嫌だったんで…。
じゃあ、明日映画館の前で待ってますね」

「お、おう」

総が立ち上がる。

「なんか…デートみたいですよね」

ピシャリ、と土方の頭に雷が走った。

「じゃ、また明日!」

総は手を振り走っていってしまった。
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