長編

□第二訓
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太陽がジリジリと照りつける。
黒髪の鋭い目をした男が公園のベンチに座って煙草を吸っていた。

彼の名前は土方十四郎。
武装警察真選組の副長だ。
真選組は江戸を守るため作られた集団で、その名の通り武装している。

しかし、真選組は一般市民から恐れられていた。
武器を持っているためか、はたまた日頃の行いか。
そのため、今まで公園にいた人々は土方が公園に現れた瞬間姿を消した。
今公園にいるのは散歩してる年寄りくらいだ。

土方は不貞腐れたように舌打ちした。

しかし、公園にいた人々が姿を消した理由は真選組を恐れていただけではなかった。
それは、土方の腕から大量に溢れている血。
先ほど、土方は部下である神楽に発砲されたのだ。
土方の心臓目掛けて撃たれた弾を土方は危機一髪で避けたが、腕をかすってしまった。
神楽は何か気に入らないことがあると周りの人間にあたるのだ。
それが今回は土方だった。
本当に神楽は自分を殺すつもりではないのかと思ってしまうが、神楽は「殺す気はない」と言う。

変な部下を持ったなあ、と土方は苦虫を噛んだような顔になる。

「あんた…」

ふいに後ろから女の声がした。
女は土方の目の前まで来ると、血の溢れる腕を持ち上げる。

「これ、血出てるじゃないですか。今止血してあげますね」

女は懐から白いハンカチらしき布を取り出す。

「別にいい」

土方は女の手を振り払った。
すると女はムッと眉を寄せる。

「私が止血してあげるって言ってるんだから素直に受け入れてくださいよ!!」

女は土方の腕をガッと掴む。

「〜〜〜ッ!!」

掴まれたときに腕の傷に痛みが走った。
土方が大人しくなったことをいいことに、女はハンカチをぐるぐると傷口に巻き付け始める。
土方は諦めたのか黙って見ている。

「これで大丈夫ですよ」

キュッとハンカチを少々きつめに結び、土方に微笑む女。
その笑顔に土方はドキッとした。

「何で怪我したかは知りませんが今度からは気をつけて下さいね」

そう言って土方に背を向ける女。
女は1度後ろを振り返り、また会ったら声かけて下さいね
と言い、何処かへ行ってしまった。

土方はそんな女の後ろ姿をボーっと見つめていた。
女の姿が見えなくなった後、胸に手をやる。鼓動が速い。
何でだ?と首を傾げる土方。

腕に目をやれば、白いハンカチからあの女の甘い匂い。

―あぁ、あの女にもう1度会いたい。

土方は心の中である決心をした。
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