長編
□プロローグ
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「…お兄ちゃん、だいじょうぶ?」
ふいに聞こえた、舌足らずな甲高い声。
白夜叉は飛び起きる。
その時に傷口が広がり、痛みが身体中に広がる。
「〜〜〜〜〜ッ!!」
酷い痛みに顔を歪める白夜叉。
恐る恐る顔をあげる。
そこにいたのは、幼い少女。
何故、こんな幼い子供がこんな所にいるのだろうか。
「血が…どうしよう…!」
涙目で焦る少女。
(そんな顔するなよ)
「止血は確か…」
そう言って少女は自分の着ていた着物の袖を引きちぎる。
(おいおい、もったいねぇじゃねぇか)
少女は傷口を見つけ出し、引きちぎった布切れでぎゅっと傷口を縛った。
「…これで止血になったのかな?」
不安そうな少女の声。
その顔を見て白夜叉はとても愛しい気持ちになった。
(俺のためにそんな顔してくれるヤツがまだいるなんてな…)
そう思うと、手が勝手に動いた。
血で染まった手は少女の頭を撫でていた。
(でも、餓鬼は笑った顔がいちばんだよな…)
少女のほっとしている顔を見て白夜叉は思った。
そこで、白夜叉の意識は途切れてしまった。