短編
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アパート生活を始めて2週間経った。
総とのアパート生活は実に充実していた。
仕事から帰れば、総がご飯を作って待ってる。
ご飯は正直ご飯と言えるようなものではなかったがそこは愛でカバーした。
俺が非番の時は総とアパートに二人きりだ。
総を独り占め出来た気がして気分は最高潮だ。
ちなみに、真選組の奴らには総は出張に行ったとか武州に一旦帰ったとか適当な事を言ってなんとか同棲してることは隠している。
特に近藤さん。
近藤さんは厄介だからなぁ。
そのうちバレるだろうけど、そのときになったら考えることにしよう。
「……………………」
「……………………」
一緒にいるわけだから会話がなくて沈黙がたまにあるがそれすらも幸せを感じた。
――あの時までは。
「土方さーん、デート行きましょデート」
「デート?」
仕事から帰ってきた俺に、総は開口一番にこんな事を言ってきた。
「どうした急に?」
「あさって、近くで祭りがあるんですよ!」
あぁ、なるほど。
最近は祭りなんて全然行ってなかったしな。
「まだまだ餓鬼だな。いいぜ、あさっては有休とっとく」
「本当ですか!!」
素直に喜ぶ総。
本当に総は癒される。
それに、何気初デートじゃないか?
あさってが楽しみだ。
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「土方さん、りんご飴食べたい。あ、わたあめも!」
「おい、食いすぎじゃねぇか?」
祭りの日がやってきた。
総はさっきから食べてばかりだった。
「だって美味しそうなんですもん」
そんな事言っているが、金は全部俺が出している。
祭りの屋台は意外と高いんだよな。
「土方さん」
「ん?」
総に呼ばれ振り向けば、総は手を俺の方に伸ばしていた。
「何だよ…、また何か買うのか?」
てっきり金を要求されていると思った俺は財布を取り出すが、総は違う違う!と首を横に振る。
「手ですよ手!手繋ぎたいんですよ!それくらい分かれ馬鹿土方」
………………あれ、こいつってこんなにデレるっけ?
照れ隠しか、ぷいっと顔を背ける総。
総の手を握れば、ぶわっと総の顔が赤くなった。
あぁ、そんな顔されるとこっちまで照れてくる。
「わ、私やっぱジュース買ってきます!」
「は?ジュース?」
「土方さんに奢ってもらってばかりなので…じゃ!!」
俺に隙を与えず、早口で喋ったあと総はジュースを買いに走って行ってしまった。