短編

□嘘、本当、嘘。
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「え、妊娠しちゃったの?」

客が来てるというのにどかりと偉そうに座るこいつは、いつになく気にくわねぇ。

「えぇ、でも天人の薬の可能性もあるらしいんですよ」

「あ、もしかして銀さんとの子供だったり?」

「話聞けよ」

いつものヘラヘラとした笑みを見せながら総の隣へと移動する万事屋。

「えー、総ちゃん忘れちゃったの?俺との熱い夜」

「さぁ。アンタと夜を過ごした覚えはありませんね」

「まぁ、ぶっちゃけ夢の話だけどね」

「夢かよ」

なんて会話だ。
いつの間にか万事屋の手は総の肩に回されている。
今すぐその腕を斬り落としたい。

「もしさ、赤ちゃん産んだとしたら総ちゃんはお母さんになるわけだ」

「へぇ、そうですね」

「でもお父さん役がいないわけだ」

「へぇ、そうですね」

「じゃあ、俺がお父さん役やるぐぼはぁ!!」

万事屋がそう言いかけた時、窓がバリーン!と割れて黒い塊が万事屋に突撃した。

「総!酷いよ、折角俺が地球に来たのに挨拶もないなんて!!」

黒い塊は人間だった。
全身黒ずくめのソイツは、顔に巻き付けられた包帯をほどく。

「神威じゃん」

透き通るような白い肌に映えるような青い目。
万事屋のチャイナ娘を連想させるようなピンク色の髪は三編みで前髪からぴょこっとアホ毛が出ていた。
………誰?

「何だ、お前こっちに来てたよかよ」

「まぁね。総に会いたくて仕事切り上げてきちゃった」

何故こいつは総とこんなに親しいんだ。

「だぁぁぁぁ!!痛ェじゃねぇか!」

神威と呼ばれる男の下敷きになっていた万事屋は声をあげる。

「ありゃりゃ、お兄さん居たの?」

「居たわ!つーかお前窓壊してんじゃねぇよ!!弁償しやがれ!」

「総、こないだ食べたお菓子食べに行かない?」

「無視してんじゃねぇよクソガキ!!」

とりあえず、この神威という男。
総の友達といったところだろうか。
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