短編
□上司はこんなに困ってます
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「あ、土方さんおかえりなぐはぁ!!」
屯所に戻ると、山崎を見つけたので一発殴っといた。
「ちょっとォォォ!!何するんですか!?」
「イラッときたから」
「理不尽だ!!」
「うっせーな。俺は今機嫌が悪ィんだよ」
懐から煙草を取り出し火をつける。
「何があったんですか?」
「……………」
「…もしかして沖田隊長のことですか?っていうか沖田隊長と万事屋の旦那が原因ですよね?」
俺の顔を見て何か悟ったのか山崎は遠慮気味にそう言った。
万事屋と総悟の交際は、隊士のほとんどが知っている。
人目を気にせずあそこまでイチャついてたらそりゃ、バレてもしょうがないのだが。
しかし、アイツらが人目を気にせずイチャつき始めたのは俺が総悟に「万事屋と付き合ってるだろ?」と聞いた次の日からだ。
それまではそれなりに人目を気にしてたのか、あまり人前では絡んではいなかった。
それが俺のあの一言だけであそこまで酷いことになるとは。
今すぐ過去にタイムスリップして自分を殴りたい。
「…気にくわねぇ」
「沖田隊長を取られて妬いてるんですか」
「そんなんじゃねぇけどよ」
まぁ、確かにあんな野郎に総悟を持ってかれるのは気に入らねぇな。
「よし、俺は決めた」
「何をです?」
「アイツらを別れさせる」
「えぇぇ!?本気ですか!?」
「当たり前だ。あのまま刀持たずにぶらぶらしてたら危ねぇし、隊長があんなんじゃ他の隊士たちに示しがつかないからな」
「それって、土方さんがただ単に万事屋の旦那のこと嫌いだからじゃ…」
「うるせぇ!とにかく何が何でもアイツらには別れてもらう!!」
俺が睨みながらそう言うと、山崎は諦めたようにため息を吐いた。
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「いいか絶対成功させろよ」
次の日。『万事屋と総悟を別れさせる』計画を山崎に話した。
この計画は昨日俺が寝ずに考えたものだ。
「しかし…そんなんで本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。何たってヤツは手ぶらだからな。10人…いや、15人いれば倒せる」
そして、俺が考えた計画というのは、
万事屋と総悟がデート→突然、攘夷浪士(に変装した真選組隊士)数人が斬りかかってくる→万事屋フルボッコ→総悟、万事屋に失望→破局!
みたいな感じだ。
万事屋は強い。
それは百も承知だ。
しかし、デート中は木刀を持っていないのだ。
つまり数人で囲めば勝てる、に違いない。
「いや、でも万事屋の旦那ですよ?」
「つべこべ言わず適当に腕のたつ地味な隊士15人集めて行ってこいよ!!」
「え!?土方さんは来ないんですか!?」
「俺は大事な仕事があるからな。なんかあったら電話よこせ」
いまだ文句を言ってる山崎を殴り、さっさと万事屋たちへの襲撃に行かせる。
総悟には悪いが、万事屋とは別れてもらうぜ!
それを考えたら自然に笑みがこぼれた。