短編

□上司はこんなに困ってます
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普段昼寝ばっかりしてる部下が昼寝を一切しないで、携帯片手にそわそわ。
おまけに外出することが多くなった(しかも帰ってくるのが遅い)。
これはもしかして部下に恋人が出来たのか。

そう思ったのが2週間前。
まぁ、他人の恋人なんて気になりはしないが、自分がまるで弟のように可愛がってたヤツの恋人が気になるのはしょうがない。

部下の恋人を探り始めたのが1週間前。
それが間違いだった。

俺の部下、総悟の恋人を見つけ出すのは簡単だった。あの総悟を惚れさせるヤツがいたのかと、総悟の恋人を見るのが少し楽しみだったりしたのだが。

まさか、まさか

「はい、旦那あーん」

あの白髪天パーの万年金欠野郎だったとは。

「あーん。…もぐもぐ」

「美味しいですか?」

「ん、美味いよ。沖田君があーん、ってしてくれたからいつもより甘い」

「もうっ、旦那ったら照れるじゃないですかィ!」

「沖田君可愛いー!!」

別に、別に構わない。
総悟が本気で好きになったなら、例え相手が同性だろうが何だろうが。
でもよりによって天敵のコイツかよ。

しかも何?このラブラブ具合。
こんな人が見てるような所で堂々とあーん?

「はぁ…」

このため息で胃の痛さも吐き出せればいいのに。

だが現実はそんなに甘くないようだ。

「あれ、土方さん居たんですか?」

居たわさっきから!

「ちょっとー沖田君、彼氏が目の前にいるのに他の男見るなんて酷いんじゃない?」

そう言いながら総悟をぎゅーぎゅー抱き締める万事屋。
あー、頭痛くなってきた。

「…おい総悟、今は仕事中のはずだぞ」

俺が総悟に話かけたら何だか知らんが(いや、実際分かってるけど)万事屋の野郎が俺を睨んできた。

「ちゃんと見回りしてますぜ、旦那とデートしながら」

「ふざけんな。見回りを何だと思ってんだ!それに刀はどうした?」

総悟の腰を見れば普段差してある刀がない(ついでに万事屋の腰にもいつもの木刀がない)。

「刀は屯所に置いてきやした」

「はあ!?」

「だってデートに刀なんて、ムードが台無しでさァ!」

「おまっ、もし攘夷浪士に襲われたらどうする!?刀がなくてどうやって対応するつもりだ!?」

「そんなの何とかなりまさァ!!」

俺と総悟が言い争っていると、万事屋が「まあまあまあ、」と割り入ってくる。
「大串君は心配しすぎ。沖田君には俺がついてるし。だから、」

どっか行け。

にこにこと笑う万事屋の目の奥がそう語っていた。

「チッ…、総悟早めに帰ってこいよ!じゃないと今度から外出禁止だかんな!!」

俺はそう言い残しその場を去った。
別に万事屋ごときに怯んだわけじゃないぞ。
ただ、このままじゃ埒があかないと思っただけだ。
俺は断じて怯んでなんかいない。
ここ重要だからな!
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