短編
□本音
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午前の授業が終わり、昼休み。
私は神楽と一緒に売店でパンを買った。
いつもは屋上とかで食べているけど今日は雨。
教室で食べることになった。
机にさっき買ったパンを置き、椅子に座ろうとした所で「うっ!」と神楽が腹を抱え始めた。
「神楽!?」
慌てて近寄ると神楽は鬼のような形相で「ぐぉぉぉ!!神威の野郎ォ朝飯に腐った卵出しやがったな殺す!!」と言い残しもの凄いスピードで教室を出ていった。
そんな神楽を見、そういえば神楽と神楽の兄ちゃんは仲悪いんだっけ、と神楽がいつも神威の愚痴を言っていたのを思い出す。
神楽早く戻ってこないかなー。
なんて、柄にもないことを思いながら椅子に座りパンの袋を開けた。
私は入学したての頃から1人だった。
もちろん、最初は皆私に話かけてくれたりしたけれど、私は素っ気なくしてたから次第に話かけてくれる人も減っていった。
それでも、それでも私に突っかかってきたのが神楽だった。
人気者の神楽がひとりぼっちになった私に話かけてくる。
最初は鬱陶しいかったけれど、今となっては神楽は私の学校生活では欠かせない大事な人だ。
お気に入りのメロンパンを一口かじれば、いつもどおりの甘い味が口の中に広がった。
この学校のメロンパンはいつ食べても飽きないなぁ。
でもやっぱり神楽がいないからいつもより美味しくないかもね。
こんなに私は神楽に依存してたのかと、呆れた。
けれどまぁ、しょうがないよね。
もふもふとメロンパンをかじっていると「ねぇ、」と、声をかけられた。
声のした方を見れば、同じクラスの女の子が。
「…何」
つい冷たくあたってしまうのは私の悪い癖。
「あの、3組の人が沖田さんのこと呼んでる…」
ボソボソと吐き出される言葉は、明らかに私に対する恐怖を表していた。
私恐がらせるほど冷たくしてたかな。
「分かった。ありがと」
それだけ言って立ち上がる。
女の子はホッとしたように「どういたしまして」と小さな声で囁くように言って、クラスの女子の群れの中に混ざっていった。