短編

□君の近くに居たいから
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ブブブ…

と、机の上にあった携帯が鳴った。

その音に勉強していた土方は反応する。
土方はチラリと携帯を見る。

(テスト期間だってのに、誰だよ)

どうでもいいヤツなら無視しよう。

土方はそう思いながら携帯を開きメールボックスを確認する。

「総悟、か…」

どうやらメールはクラスメイトの沖田総悟からきていたらしい。

『数学のワークの答えなくしたんで、貸しなせぇ』

随分可愛い気もないメールだが、土方は自然に頬が緩むのを感じた。

直ぐに了解メールを作成し返信ボタンを押す。
そして土方は窓を開けた。

窓を開けて真っ先に見えたのは先程メールをしていた相手、沖田総悟。

沖田の持っていた携帯が震え、メールを受信したことを知らせる。
沖田は携帯を開いてメールを読むと、
土方の方を見てニヤリと笑った。

「流石土方さん。ありがとうごぜいやす」

「ったく、他のヤツに頼めばいいだろうが。俺だって暇じゃねぇんだよ」

「だって、土方の家が俺の家と一番近いんですもん」

その通りだった。
土方の家と沖田の家は異常な位近い。
しかも土方の部屋と沖田の部屋はちょうど向かい合っているため、
窓を開ければこうやって普通に会話することも出来るのだ。

「お前は昔から他人に頼り過ぎだ。少しは自分で…」

「はー、堅苦しい説教は俺飽きちゃいましたよ」

土方の言葉を遮り、沖田は身を乗り出して土方の部屋へと飛び移っていく。

「おいコラ!」

怒鳴る土方をよそに沖田は土方の部屋を見渡す。

「相変わらずですねぇ土方さんの部屋は」

ぐるりと見渡した沖田は詰まんなそうに言う。

「変か?」

土方が問えば沖田はふるふると首を振る。

「いえ、あんたの部屋には必要最低限の物しかないじゃないですか。
もう少し洒落っけがあってもいいと思いますよ」

「何だよそれ…。だいたい部屋には机とベッドとタンスがあればいいだろ」

「あーぁ、これだから土方は」

「……………」

沖田の言葉に土方は部屋を見るが首を捻る。

「…例えば、写真とか!」

「写真?」

「そっ、昔の写真を飾っておくってのはどうです?
俺の部屋にも飾ってありやすぜ」

なるほどな、と土方は思う。

「でもよ、俺そんなに思い出に残る程の写真とかねぇからな…」

写真と言っても、運動会で頑張って走ってる写真や遠足で弁当を食べてる写真、修学旅行のホテルで友達とふざけてる写真など、
部屋に飾るにはピンとこないものばかりだ。
それに主な写真は小学生や中学生のものが多い。
部屋に飾るとするなら、もっと最近の写真がいいだろう。

「ふーん…」

沖田は土方の発言に不満そうにする。

「あ、そういえば数学の答えだよな!?ほら」

機嫌の悪くなった沖田は面倒くさいと、
そう思った土方は沖田に数学のワークの答えを渡す。
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