短編

□双子少女は悩む
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総はカツ、と小石を蹴った。
小石はコロコロと転がる。

「…ちょっと、着いてこないでよ」

総は後ろにいる総悟に話しかける。

「お前に着いていってるわけじゃねぇよ。
学校が同じなんだからしょうがねぇだろ」

総と少し距離をとりながら後ろを歩く総悟。

「だったら登校時間を別にするとかないの?」

「なんだお前、兄ちゃんと一緒に登校するのがそんなに嫌か」

「嫌」

即答する総。
総悟は目を細め、前にいる総に近づいた。

「ッ!?痛い痛い痛い!!髪の毛引っ張らないでッ!」

ぐいぐい、と総の左サイドに結ってある髪の毛を引っ張る。

総は総悟の手から逃れようと暴れるが
総悟は上へ上へと髪の毛を引っ張る。

「いでっ!!」

がつん!と総悟の頭からそんな音が聞こえたかと思うと
総の髪の毛は総悟の手から離された。

「ひ、土方さん…グーはないでしょ、グーは」

「総を虐めてるお前が悪い」

ドスの効いた低い声が後ろから聞こえる。
後ろには土方十四郎と土方トシ子がいた。
この2人も総悟たちと同じく双子だ。

音の正体は十四郎が総悟の頭を殴ったものだった。

「十四郎ォォォ!!」

総は十四郎に飛びつく。

「髪の毛引きちぎれるかと思ったよぉ!!」

涙目ながらに訴える総。
十四郎はそんな総の頭をよしよし、と撫でる。

「総悟、お前兄ちゃんなんだからもう少し…」

「うるせぇ死ね」

「なっ…!」

十四郎の頭に怒りマークが現れる。
今にも殴りかかりそうな勢いだ。

「てめぇ…放課後覚えてろよ」

怒りを含めた静かな声で十四郎は言うが、
総悟は特に焦った様子もなく十四郎の後ろに遠慮がちに立っていたトシ子の袖を掴む。

「トシせんぱーい!土方さんが怖いでさァ!!」

トシ子の腕に抱きつきながら甘えた声で言う。

トシ子は困ったようにしながらも頬を赤く染め小さな声で十四郎に言った。

「総悟君虐めたらダメだよ、十四郎」

にこりと悪気のない笑顔で言われ十四郎は言葉を詰まらせる。
トシ子の腕にはニヤニヤと十四郎を見つめる総悟が引っ付いている。

「どっからどう見ても俺は悪くねぇだろ…」

ぽつりと呟く十四郎。
十四郎はトシ子の笑顔に弱いのだ。

「トシ先輩行きやしょう!」

子供のような無邪気な笑顔で総悟はトシ子の腕を掴んで歩き出す。
トシ子はトシ子で嬉しそうだ。

「むぅー。トシちゃんったら本当にお兄ちゃんに甘い!!」

総は頬を膨らました。
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