短編
□猫は敵でした。
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「かぁぁつらぁぁぁ!!」
バタバタと家の屋根と屋根を走り渡りながら少年が叫ぶ。
少年の名前は沖田総悟。
泣く子も黙る真選組の一番隊隊長だ。
彼は今、指名手配もされている攘夷志士・桂小太郎を追っていた。
桂は常日頃から真選組に追われているためか、逃げるのはお手のものだ。
今も屋根瓦なのに走るスピードは平らな地面とたいして変わりない。
そのため沖田はバズーカで仕留めようとするがそれも見事に全て避ける。
すると桂はぴょん、と今いる屋根を飛び、違う屋根へと飛び移る。
沖田も追いかけようとするが立ち止まってしまう。
屋根と屋根の間隔が随分と開いていたのだ。
―自分にこの距離を飛べるのか。
そんな考えが沖田の脳裏を横切る。
桂をチラリと見れば、まるで挑発でもしてるかのような目で沖田を見つめていた。
そして、
「フッ…」
鼻で笑ったのだ。
それを見た瞬間、沖田は怒りと悔しさの感情に襲われた。
桂は再び走り出す。
それを見、追いかけようとする。
そのためには屋根から屋根へと飛び移らなければいけない
しかし、やはり屋根と屋根の間隔が広く
ゴクリと喉が鳴る。
―あいつが飛べたんだから
俺が飛べねェはずがねェ!!
沖田は意を決っして飛んだ。
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がしゃん!!
後ろの方で何やら大きい音が聞こえた。
桂は後ろを振り向く。
後ろには今まで追いかけてきた沖田の姿がなくなっていた。
多分、飛び移りに失敗して屋根から落ちてしまったのだろう。
もともと桂はそれを狙っていた。
桂は屋根から屋根への飛び移りには慣れていた。
それを利用してできるだけ広い間隔の所を狙って飛んでいたのだ。
それは見事に成功した。
普通ならそのまま逃げるのだが、
今日の桂は妙な胸騒ぎを感じ、立ち止まってしまった。
桂は耳をすませる。
……物音が一切しない。
打ち所でも悪くて気絶してしまったのだろうか。
桂は屋根のはしっこまで戻り屋根と屋根の間を覗きこむ。
そこには気絶した沖田がいた。
はずなのだがいなかった。
いたのは気絶した子猫だった。