短編
□夏風邪
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「………っん…?」
土方が沖田の髪を触っていると沖田がか細い声をあげた。
「近藤さん…?」
重そうな瞼をうすらうすらと開け、土方と目があった沖田の一言。
「ちげーよ」
頭を撫でていた手を引っ込めながら土方は言う。
「近藤さぁん…」
しかし沖田は聞く耳を聞かず土方を近藤だと思い手を伸ばしてくる。
「おい…っ!」
ぎゅっと手を握られる。
指と指を絡めるように繋がれた手。
慌てる土方をよそに沖田は気持ち良さそうにまたすやすやと寝始めた。
「寝たのか…?」
顔を覗き込み、再びため息をつく。
だが、大分前より顔色は良くなってる。
「…そんなに近藤さんがいいかよ」
チッと舌打ちをする土方。
自分にはあれだけくたばれ、死ねなどと暴言を吐いているにも関わらず、この近藤へのデレッぷりは何だろうか。
…少しは自分にだってデレてくれたっていいじゃねぇか。
イライラは積もりに積もるが発散する術もない。
煙草を吸えればいいがここは病人のいる部屋だ。外に出たいが手を繋がれている。
手を…繋がれている?
土方は手に意識を集中させた。
沖田の手は土方の手より一回り程小さく、しかし、刀を握っているとは思えないくらい白く綺麗だ。
女のように細い手首は触っただけでもすぐ折れそうだ。
今沖田の手を握っているのが自分でよかったと思う。
これが他の奴だったら嫉妬で気が狂いそうだ。