リクエスト
□お風呂
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初期設定銀魂 若土+幼少沖田
江戸に上京してまだ間もない頃。
総には納得いかないことがあった。
あっはは!と賑やかな笑い声が響く風呂場を見つめながら頬を膨らます。
上京する前は、総も一緒に皆と風呂に入っていたのに、最近は一緒に入っちゃダメ!などと言われ大人しく言うことを聞いて皆が上がった後に一人で入っていたのだ。
それが納得いかないのだ。
一人であんなにでかい風呂に入るのは落ち着かない。それにつまらない。
皆で入った方が何倍も楽しいのに何で自分だけ除け者にされてるんだ。
しかし、総が大好きで尊敬する人物でもある近藤からの言い付を破ることも出来ずイライラは募っていくばかりだ。
あー、いい湯だった。
風呂上がりの隊士たちを横目に総はさっさと風呂場へ向かった。
誰もいない風呂場はやけに静かで、さっきまでの賑やかさが嘘のようだった。
湯につかれば、丁度良い温度でつい眠くなってしまう。
その時、がらりと風呂場の戸が開いて銀色がひょこりと顔を覗かせた。
「…土方さん?」
隊内に銀髪を持っている人など一人しかいない。
名前を呼べば土方は驚いだように総を見る。
「何だ、お前入ってたのかよ」
「えぇ、まぁ。土方さんは何しに来たんですか?」
「風呂場に来たんだから風呂入りに来たに決まってんだろ」
「じゃあ、早く入ればいいじゃないですか」
戸から一歩も動こうとしない土方。
沖田から見たら、土方の顔だけが見えて体は戸に隠されている状態だった。
「いや…、つーか、お前風呂上がったら入るわ」
風呂の戸を閉めようとする土方に総は顔をしかめた。
「一緒に入ればいいじゃないですか」
総の言葉に土方はピタリと戸を閉める手を止めた。
「何で誰も一緒に入ってくれないんですか」
「………………………」
「一人でこんなでっけー風呂、つまんないのに」
「………いや、あのさ」
「私が女だから?」
何となく総は気づいていた。皆が自分との風呂を避ける理由が。
今は成長期で昔と比べれば体が丸くなって女の体へと変化してきている。
それが理由だとしても、総には関係ない。
だってもうとっくに女として生きる道を捨てたのだから。
「わーったよ、しゃーねぇな」
少しの静寂を断ち切るように土方が深くため息をついた。
そしてバスタオルを持ってきて総にぽいと投げつけた。
総が首を傾げると、体に巻き付けろとぶっきらぼうに言ってきた。
素直にバスタオルを体に巻き付けると、土方はダルそうに風呂場へと足を踏み入れた。
そんな土方の下半身にもタオルが巻き付けられていた。
「近藤さんには内緒だかんな」
一緒に風呂に入ってくれることが嬉しくて総は何度も首を縦にふった。
数年後。
「え、土方さんと風呂?そりゃあ何年前の話ですか。今は絶対入りたくないですね。汚いですし。てか、洗濯も別々にしてほしいんですけど。もう存在を消すしかないですね。ってことで死ね土方」
「何この反抗期!?酷くない!?」
(あの時嬉しかっただなんて、口が裂けても言えませんよ)