リクエスト
□ぬくもり
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武州時代土沖
ぱちん。
乾いた音が聞こえてきた。
土方と近藤は音の方に目を向ける。
そこには総悟とミツバがいて。
総悟は真っ赤にした頬をおさえて今にも泣き出しそうな顔をしていた。
ミツバは手を震えさせ、やってしまった、という顔をしていた。
あぁ、なるほど。
土方と近藤は何があったのか、だいたい予想はついた。
「お、俺何も悪くねーもん…。悪くねーもん!!」
遂にはポロポロと泣き出してしまった総悟はダッと何処かへ走って行ってしまった。
「総ちゃん!」
ミツバは追いかけようとするが、土方に引き止められた。
「俺が行ってくる」
待ってろ、そう言い残し土方は総悟を追いかけた。
「くっそ…逃げ足だけは早ェ餓鬼だ」
道場を抜け出した総悟は、道場の周りをうろうろしていたが、土方を見つけるとともに近くの森の中へと逃げて行ったのだ。
総悟を見失った土方は勘だけで森の中を歩くが、見つかる気配はない。
しかし、その時、ガサガサと近くで音がした。
土方は反射的に音がした方へと手を伸ばす。
「いてっ」
――ビンゴ。
土方は総悟の手を掴んでいた。
「沖田先輩、戻りますよ」
「うるせぇ!離せクソ土方!!」
「みんな心配してますよ」
「離しやがれ!これが先輩に対する態度かよ!!死ね!」
話しが噛み合わない上に、暴言。
土方はイラッときた。
「総悟!!」
声を上げて名前を呼べば、総悟はびくりと大人しくなる。
「総悟、帰るぞ」
うるうると涙目になる総悟を見て、やりすぎた、と土方は思う。
だから今度は優しく、手を差し伸べて言ってみた。
するとどうだろうか、総悟は無言で土方の手をとった。
「総ちゃん!」
そのまま手を繋いで道場へ帰ると、ミツバは総悟をぎゅっと抱き締めた。
近藤は手を繋いで帰ってきた土方と総悟を驚いた顔をして見つめていた。
「ごめんなさい総ちゃん。私ったら…、」
「…姉上ごめんなさい。俺我が儘過ぎました…」
「いいの!我が儘でもいいの…。だから私の前から居なくならないで…っ」
「はい…」
抱き締め合ったあと、二人で笑い合う姉弟を満足そうな顔で土方は見ていた。
(今度から俺のことは“総悟”って呼びなせェ!)