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□10000hitフリー小説
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山崎はがっくりと肩を落とした。

(俺、本当バカ)

こんもりと手の中にあるぬいぐるみを遠い目で見つめながらため息を落とす。

きっかけは、数分前。
私服で街を歩いていたらガラの悪いおっさんに絡まれた。
そのおっさんは段ボール箱を持っていて。

段ボール箱の中には手のひらサイズのぬいぐるみが沢山あって、おっさんは山崎にこのぬいぐるみを買うように言ったのだが山崎は断った。
そしたらおっさんに凄い形相で睨まれて、山崎は体を震わせながら財布を出した。
そして、山崎は諭吉を三枚取られ、代わりに段ボール箱のぬいぐるみを二掴み手に入れた、というわけだ。

(てか、こんなぬいぐるみごときに3万円って…)

おっさん曰く、ブランドもののぬいぐるみだとか。

(つーか、いらねぇし)

どうしよう、このぬいぐるみ。
この沢山のぬいぐるみを欲しがる人いるかなぁ、真選組に。
いるわけないよな〜。
あ、近藤さんとかどうだろう?
きっとお妙さんにあげるんだろうな。
一応お妙さん女の子だし喜ぶかな。
……………ないな。

はぁ、と再び深いため息をつく。

(せっかくの3万円だし、捨てるにはもったいないよな…)

屯所に着き、色んな隊士に、いらないか?と聞いてみるが誰もいらない。と言う。

あーぁ!
発狂しそうになるのを押さえつけながら屯所の廊下を歩く。

諦めるか…。

そう思ったとき、ひょこりと廊下の角から沖田が顔を覗かせた。

「沖田さん、…」

ぬいぐるみを沖田に勧めようかと思ったが、人一倍プライドの高い沖田のことだ。
殴られるに決まってる。

山崎はこんにちは、と挨拶をして沖田の脇を通りすぎようとした。

「それ、ブランドの…」

「え?」

ぼそぼそ、と沖田が何かを言った。
山崎は沖田の方を振り返ってみると、沖田は山崎の手にあるぬいぐるみを見つめていた。

「えーっと、沖田さん?」

山崎が沖田に声をかければ、沖田はハッとなる。

「あ…、悪ィ」

そわそわ、と落ち着きのない沖田の様子に山崎は恐る恐る次の言葉を口にした。

「欲しいんですか、これ」

そう言うと、ほんのわずか。ほんのわずかだったが沖田はこくりと頷いた。

「あげますよ!」

山崎は手にあるぬいぐるみを全部沖田に預けた。

すると沖田はパァ、と目を輝かせた。

「ありがと、山崎」

あぁ、沖田さんの口からありがとう、だなんて…。
山崎はよく分からない喜びに満ち溢れた。

るんるん、と去って行く沖田の背中を見ながら、ふいに山崎は疑問をもった。

(あれ、沖田さんってぬいぐるみ好きなの…?)

「……いや、まぁ何でもいっか」

沖田さんも喜んでたみたいだし。



(高いから買えなかったんだけど、)

(こんな身近にあったなんてとんだ幸運)
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