リクエスト

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「枕、欲しい」

ぽつり、と呟いた沖田の言葉を土方は聞き逃さなかった。






「で、どの枕が欲しいんだ?」

仕事をさっさと終わらせた土方は、沖田を引き連れて近くの家具屋へと足を運んだ。

「好きなの選んでいいんですか。ってか、土方さんが買ってくれるんですか」

「枕の一つや、二つくらい買ってやるよ」

今日は雨が降りますね。沖田は可愛らしくもないことを言葉にするが、その顔には確かに喜びが浮かんでいた。

「どれが良いのか、分かりませんねィ」

枕を一つ一つ丁寧に見ていきながら沖田は首を傾げる。

「これなんかどうだ?」

そう言って土方が手にしたものはマヨネーズの形をした枕。

「いらねーよ」

しかし、沖田に一蹴されて終わった。

その後も枕を見ていくが、なかなか良いものがなく30分経っても沖田は決められないでいた。

土方はいい加減歩き疲れたと、足を止める。
それと同時に沖田もピタリを足を止めた。

沖田を見れば、ただ一点をじーっと見つめている。

「何かいいものあったのか?」

土方も沖田と同じ方を見てみる。
そこにあったのは、

「………抱き枕?」

女の子が好むような可愛いらしい羊のぬいぐるみ。

土方は沖田の顔とぬいぐるみを交互に見た後、欲しいのか?と沖田に声をかけてみた。

「何…言ってんでィ!べ、別にあんなの欲しくないし!!」

「………………」

そう言いつつも、沖田の目はぬいぐるみに向けられていた。

「そうか。だったら違う枕、探すぞ」

土方の言葉に、渋々頷く沖田。
物欲しそうにぬいぐるみに注がれた視線に土方はため息を吐いた。

「わーったよ。これ買ってやるから」

ひょい、とぬいぐるみを掴みあげレジへと向かう土方。
沖田は驚いたように土方の後を追う。

「別にいらねーって言ってんだろィ!」

ぎゃーぎゃー耳元で騒ぐ沖田をよそに土方はずんずんとレジに進む。



「…男がそんなの使ってたら気持ち悪いに決まってまさァ」

レジで会計を済ませ、ぬいぐるみを沖田に渡せば沖田は弱々しくそう呟いた。

「気持ち悪くねぇよ」

「だって男ですぜ?しかも18の」

「総悟だから気持ち悪くない」

「…意味が分かりません」

目を伏せながらぬいぐるみをぎゅっと抱き締める。
その表情はどこか嬉しそうだった。


(誰にも言えなかった、秘密)

(ぬいぐるみみたいな可愛いものが好きだなんて…言えるわけなかったんだ)
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