短編
□ケーキらぶっ
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「姉上!」
こっちこっち、と手招きするのはサラサラとした栗色の髪が特徴的な少年、沖田総悟。
「楽しそうね、総ちゃん」
そう言って微笑むのは、総悟の姉ミツバ。
この二人、自覚はないようだが、それはもう通りすがりが二度見+ガン見するくらいの美人さん。
その為、道を歩いている今も通りすがりの人の視線が非常に痛い。
しかし、この鈍感姉弟がその視線に気づくはずもなかった。
「今日は何処のケーキ屋行きます?」
「ふふ、本当に楽しそうね。私は何処でも構わないわよ」
「1ヶ月ぶりなので凄く楽しみなんでさァ!
じゃあ、俺が決めてもいいですかィ?美味しそうなケーキ屋があったんです!」
今は二人でケーキ屋巡りをしている。
昔は週一ですることもあったが、今はミツバの体調が優れないこともあり、月一で出来るか出来ないかくらいだ。
「此処でさァ!」
総悟が指差した先には、外見がカラフルに彩られた小さな建物だった。
中に入ると甘くて香ばしい匂いが鼻を掠める。
「こんな所にケーキ屋さんがあったのね…。気づかなかったわ」
ミツバがそう言うと、総悟は嬉しそうに笑う。
「ささ、姉上!」
総悟はミツバの手を引いてケーキが並んでいる所まで行く。
「いらっしゃいませ」
店員がお辞儀をしながらにこりと笑う。
「ショートケーキ2つお願いしまさァ」
総悟が注文すると、店員はかしこまりました。と微笑み手際よくショートケーキを箱に入れていく。
ケーキの箱を受け取った総悟はミツバとケーキ屋の外にあるベンチへと腰掛けた。
箱のふたを開ければ美味しそうな匂いが漂う2つのショートケーキ。
総悟は目を輝かせた。
「これ、姉上の分のケーキ!」
ケーキと、ケーキ屋で貰ったプラスチックのフォークをミツバに渡す。
ミツバは嬉しそうな総悟を見てにこりと笑う。
実に微笑ましい風景である。
が、こんな美人姉弟を馬鹿な男たちがほったらかすわけがなかった。