紡ぐ湖


□長老と住職
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「父上。その包みは一体……?」


里に入る少し前の事。
半蔵は、伊賀の長老が隠し持つ小包みについて尋ねた。
気付かれぬように持っていたというのに、この男は。
長老は、随分立派に成長したものだと感心する一方で、余計な詮索にため息を漏らした。


「……」
「! ……失礼致しました」


無言の回答に、ようやく察したのだろう。
半蔵はすぐに姿勢を正し、頭を下げた。





長老は、五人の若い忍び達を引き連れ、河内の国は歓心寺に辿り着く。
天候は晴れ、里は穏やかな空気に包まれ戦をしばし忘れさせる。
息子である服部半蔵を同盟軍の頭領に指名し(不思議と誰からも不満すら出なかった)、
まずは二人でこの寺の住職を説得する事となった。
その間、他の忍び達は境内を見回り、敵襲を警戒する。
甲賀の長も、今頃各国の忍び衆に忙しく文を飛ばし続けている筈。
今この瞬間がどれほど平和に感じたとて、気を緩める事など許されない。




住職には予め文を飛ばして、人払いを頼んである。
大切に育てた孫同然の娘を寄越せと言われて
はいそうですか、とは行かぬであろうと長老は頭を悩ませた。


いや、下手な小細工は寧ろ逆効果。
誠心誠意、頭を下げるより他は無い。
それでも断られたその時は――――。
チラリと懐の小包に目を配ると、腹を決めて、住職が待つ本堂へと足を踏み入れた。
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