紡ぐ湖
□似た者同士〜sideA
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先の戦で助けてくれた馬――茶々丸の世話は、私の役目であり、楽しみでもあった。
優しくて頼もしくて頭が良いところが五右衛門さまに似ている気がして、とても親しみが持てる。
今日も、せっせと馬房の掃除に励んでいた。
「ヒヒン」
「あ、わかる? 実はね、嬉しい知らせがあるんだよ」
小さく嘶き、私に擦り寄ってくる茶々丸。
こういう勘がいいところも、本当にあの人と良く似ている。
「これから、五右衛門さまが馬術を教えてくれる事になったの! 私もお前に乗れるようになるかな」
「一緒にお出かけしてみたいって言ってたもんね。楽しみだなー」
「ヒヒン!」
「うんうん。一緒に頑張ろうね!」
鼻を鳴らして、茶々丸も喜んでくれている。
馬に乗れるようになったら、どこに行こう?
遠い町や、山や海……様々な場所を思い描いて、つい顔がにやけてしまった。
想像したどの場所にも、隣には五右衛門さまがいる。
二人で旅に行けたら、きっと、すごく楽しいに違いない。
「おい、何してるんだ?」
聞き慣れた声に振り返ると、五右衛門さまが入口に立っているのが見えた。
腕組みをして、何だか機嫌が悪いような……?
しまった。
掃除に時間をかけすぎたかもしれない。
「すいません、すぐに終わらせます!」
私は急いで足元の道具を片付け、馬術訓練の準備を進めた。
ある程度乗れるようになるまで、五右衛門さまが付きっきりで指導してくれる事になっている。
一日中一緒にいられる日が続くと思うと、嬉しくてまた顔がにやけてしまう。
(いけない、真面目にやらなくちゃ)
こっそり自分に喝を入れて、茶々丸の手綱を手に取った。