Book

□すいません。俺の存在意義って何ですか。
1ページ/3ページ

「なぁアルポンス」
「わふぅ?」
「つくづく思うんだか、この遠征隊に俺の居場所はあるのか」
「わふ?わんわん!」
「そうだよな、あるよな。ただ立場的に何と言うかこう、もっと必要とされたいというか」


アルポンスが慰めているのかぽんぽんとシュバルマンの頬を軽く叩く。
この時シュバルマンは忘れていたが、アルポンスはもっと不憫であった。
しかし偉大なる大魔法師との関係はそれで成り立っており、今更変えようもない。


「・・・アルポンス」
「わん!」
「・・・肉球、ちょっとカサついてるな」
「わふ!?」
「あれ、シュバルマンさん。どうしたんですか?アルポンスと遊んでいたんですか?」
「・・・ソーマ」
「えっと、はい?」
「俺って何なんだろうな」
「話が読めないのですが・・・何かありました?」


射程がなく、ソーマのように近距離、中距離、遠距離全てで戦えない。
イリシアさんのように素早く動けない。
ピンコだって範囲攻撃ができる。
アエルロトは攻撃と治癒が両方できて、しかも賢い。
ナギさんは威力こそ強くないが攻撃もできるし、皆が怪我した時に頼れるし。
クロモドは何よりも火力が尋常じゃないし。範囲攻撃半端じゃないよな。
ルコは技も多彩で素早いし。少しなら広範囲にも攻撃できるし。
エルピントス様は俺と似ているようにも思えるが俺より攻撃は素早いし治癒ができる。

・・・等々シュバルマンが語っているのをソーマは大人しく聞いていた。


「・・・で、治癒もできず範囲攻撃もあまり得意でないことに気付いてしまったわけだ」
「はあ・・・。まあ言いたいことは大体分かりました」
「しかも攻撃ものろいんだ!俺の強みって何なんだ!」
「単騎でも戦えることと一撃の威力が強いことと丈夫なことではないでしょうか」
「これに気付いた時俺は心底悲しくなった。そこで俺は欠点を克服しようと考えた」
「僕の話、聞いてます?」
「そんなわけでまず俺はクロモドの所に行くことに決めた」
「聞いてないんですね」
「そんなわけだ、じゃあなソーマ!」


そう言って走って行くシュバルマンの足の速さはソーマと同じくらいである。
しかしソーマが鎧を着用していないことを考えると、実際足が速いのはシュバルマンの方だろう。
男性陣で最も速いのは今のところソーマだが、鎧を外すとシュバルマンが一番になることが予想できる。
小さくなっていくシュバルマンの後ろ姿を見てソーマはアルポンスに話し掛ける。


「・・・アルポンスの方が不憫なんだけどね」
「わふ!?」
「ごめんごめん、冗談だよ。宿に戻る前にクレープでも食べようか」
「クゥン・・・」
「大丈夫、クロモドさんには内緒にするから何も言われないよ」
「わふ?わんわん!」


ソーマは目を輝かせたアルポンスに微笑みかける。
少年が分厚い本を背負った二足歩行の犬を引き連れている光景は、何だか不思議である。
尤もそれは誰が引き連れていても不思議な光景なのだか。


「クレープ屋、あるかな」
「わふ?」
「なかったらパン屋で胡桃パンとクロワッサンを買っていこうか」
「わん!」
「クロモドさんはシュバルマンさんにちゃんと対応してるのかな?」


恐らく対応していないだろう光景を想像しつつ、ソーマはアルポンスに訊く。
或いは大魔法師様と褒め称え面白そうな本を差し出せば対応してもらえるのかもしれない。
そんなことを考えつつソーマはアルポンスを連れて歩く。


「甘い匂いがするけど、何の店かな」
「わん!」


二人、正確には一人と一匹はおやつ探しと散歩を兼ねて、甘い匂いのする方に歩いていった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ