TFP
□Blood drop
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「痛っ」
小さく声を上げてノックアウトは身を引いた。
「…いつつ…」
メスをトレイにおこうとしたところ、近くにあった第二鉗子(だいにかんし)の刃に人差し指が触れて切ってしまった。
「どうしたよ、ノックアウト」
くるりと隣でカルテを書いていたブレークダウンが振り向く。
ノックアウトは傷ついた人差し指を助手に見せて顔をしかめて見せた。
「私としたことが…、第二鉗子でうっかり指を切ってしまったよ」
「見せろよ」
ブレークダウンの大きくて頑丈な手が優しくノックアウトの細くて鋭い手を取る。
「傷は浅いな…」
「鉄板で切るのと同じ事さ、心配はいらないよ」
そういってノックアウトがそっと手を引こうとしたときだった。
すっとブレークダウンがノックアウトの手を持ち上げ、ノックアウトの鋭く尖った人差し指を口に含んだ。
ぷつり、と舌が切れる音が鳴る。
「ブレークダウンっ…?」
ノックアウトは困惑したような表情であたふたともがく。
ブレークダウンは気にせずノックアウトの指から血を舐めとると、指を口から離した。
唾液で濡れた唇を舐める舌に僅かに血が滲んでいる。
「ブレークダウン…なんで…」
「嫌なだけだ」
おどおどと問いかけるノックアウトに何の含みもなくブレークダウンはさらりと答える。
「お前の赤は綺麗だぜ…。好きだ」
「…?」
「だから、装甲以外でお前の肌が赤く濡れてんのは嫌だ」
ぼそぼそとブレークダウンは続ける。
「俺がケガしても、お前がケガするのは嫌だ…」
そういってそっぽを向くブレークダウンに、ノックアウトはクスリと笑う。
「なんだ…、そうならそうと言ってくれればいいじゃないか…いきなりのことだから少し慌てしまった」
それからブレークダウンに近づいて首にスルリと手を回す。
「私も自分の体が傷つくのは嫌いだがね…それよりもお前が傷つくことだって嫌さ…」
体格差が違うために少し爪先立って聴覚センサーに囁く。
「で、さっきの続きは?」
ニタリと挑発的に微笑むノックアウトの顎を掴み、ブレークダウンはその唇に噛みつくようにキスをした。