TFP

□White snow
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「ブレークダウン!」
にこにこしながらノックアウトが呼んでいる。
あらかた書類も片づいてきたので、いつもなら生返事で返すところを、ノックアウトの方を向いてから返事する。
「どうしたノックアウト。」
すると、相方はパソコンのディスプレイの上部分を指差した。
「見てくれ、美しいだろう。」
珍しく真面目に朝からパソコンの前に陣取って作業していると思ったらこんなもの調べていたのか。軽くがっかり。
細い指先が指していたのは地球に生えている植物で赤い花(正確には700ナノメートルの色合いを持つ色の花)をさかせる樹だった。
「…これが?」
「私に似て美しいと思わないか?まあ、私の方が断然美しいけどね。」
俺のため息混じりの言葉にさりげなく自慢してからノックアウトは長々と説明を始めた。
この花は日本という国に昔からあること。
油がとれること。冬に咲くこと。
それ以上は覚えていない。
ただ、そんな長ったらしい説明のあとにノックアウトがおもむろに立ち上がって言った。
「さてと、外に行こうか。」
「え?」
いきなりなにを言い出すやらこの道楽軍医は。
「お前仕事は良いのかよ?」
「何のことやら。」
肩をすくめてデスクを指差す。
きちんと整理されて積まれた書類とデータディスク。
きちんとやるべきことはやったらしい。
いつもこんな感じでいてくれればなぁ…。
「さ、行こうか。」
「何処へ?」
歩き出した小柄な背中に問いかければ、くるりと振り返り、さらりと答えた。
「誰にもじゃまされない場所。」
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