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□新入りと師匠の対話
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ラチェットは隣で黙々と本を読んでいる新入り助手、ストームブレイカーを見た。
彼女は何かをぶつぶつつぶやいている。

「ストームブレイカー。いったい何を読んでいるんだ?」

不意に問いかけたラチェットに、ストームブレイカーは本から顔を上げた。

「あ、師匠。これは地球から持ってきた書籍なんですが、フランス語を日本語訳にした物語なんです。ですが、フランス語の話といろいろ違うところがあって。今読解に苦労していたところです。」

その声が若干低いのは彼女が性同一障害で男を装うために発声を低く保っているからである。

ストームブレイカーの答えにラチェットは軽く笑いを漏らした。
それに、ストームブレイカーは怪訝な顔をする。

「君は生真面目だな。」

全く君らしい。と。
ストームブレイカーは誉められたのかどうなのか分からず、曖昧に笑う。

「小説なんて作者の意図によって作られたものだろう。その物語に隠された本当の意志なんて、作者だけが知っているかもしれないし、他の訳者が気づくかもしれない。多様な解釈がされる。いちいち分析しないで、ありのまま受け入れたらいいよ。」

ストームブレイカーはラチェットの言葉を聞き、少し時間をかけてその言葉の意味を考えるように眉間にしわを寄せた。

そして口を開く。

「そうですね師匠。ですが、俺は理解したいんです。なぜ彼ら人間がこんなにも予測不可能なのか。
俺達トランスフォーマーは自分の性能はある程度わかるし、作りもわかるから、だいたい自分に向いてるものがわかる。
でも人間はその確率さえ飛び越えて奇蹟すら見せる。
それがどうしてなのか知りたいんです。
無数につくられるパターンの中で、俺達トランスフォーマーにも個性を見いだせるんだろうかって。」

ストームブレイカーのアイスブルーのオプティックセンサーに見つめられ、ラチェットも考え込んだ。

そして口を開く。

「それがわかったら、君はこの星の運命を知ったに等しいね。」

師匠の言葉に助手は首を傾げただけだった。

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