TFG1 擬人化
□大好き
1ページ/1ページ
「平和だねぇ」
ぽつり、スカイファイアーが言った。
「暇くせぇ」
フンと鼻を鳴らしてスタースクリームが言う。
春を迎えたばかりの緑の丘。
タンポポやスミレが咲き乱れ、その中で、クローバーやシロツメクサに囲まれた空間にスカイファイアーとスタースクリームはいた。
草の上に寝転がり、二人は流れゆく雲を見ていた。
普段、この通りサイバトロンであるスカイファイアーや、デストロンであるスタースクリームが二人で一緒にいることは有り得ない。
彼らが恋人同士だということを除けば。
「平和は良いなぁ…」
目を閉じてうっとりとつぶやくスカイファイアー。
「日和ったこと言いやがって…」
呆れたように言うスタースクリーム。
それでも、呆れた素振りは見せながらスタースクリームは、スカイファイアーがどれだけ平和が好きかということを知っていた。
むしろ、戦いそのものを嫌っているスカイファイアーがスタースクリームの敵となってしまったのはその性格が影響しているのだから。
だからすれ違ってしまった。
だから一緒になれなかった。
そう思うと、スタースクリームは、目の前のこの平和をぶち壊したくてたまらなくなるときがあった。
「スタースクリーム…」
目を閉じたままスカイファイアーが言う。
「何だよスカイファイアー」
スタースクリームは目だけでスカイファイアーを見やる。
「君は…私を恨んでる?」
スカイファイアーはまた目を閉じたまま言った。
突然の言葉にスタースクリームが返答を返せないでいると、スカイファイアーはまた話し出す。
「無理もないかもしれないね…、だって私は氷の下で眠り続けていて、君をずっとひとりぼっちにしていた。そして、やっと会えたのに君の敵になった。それなのに、図々しく、まだ私を好きでいてなんて、勝手だよね…」
スカイファイアーの右の目から雫が零れ落ちる。
「ごめんねスタースクリーム。私を恨んでいいよ。それだけのことをしたんだもの」
そう言って、スカイファイアーは黙った。
スタースクリームはその横顔をじっと見る。
そしてゆっくり体を起こし、手を伸ばしてスカイファイアーの雫を拭った。
「勝手なこと言ってんじゃねぇ」
スカイファイアーが目を開ける。
スタースクリームは続ける。
「何が俺様を一人にしたから、俺様の敵になったからって自分を恨めとか聖人ぶったこと言ってんだ。ふざけんなよ」
はぁ、とため息を一つついてスタースクリームはまた話し出す。
「お前一人悪いつもりで、俺がお前を敵に思って、それでお前だけ綺麗に終わろうなんざゆるさねぇ。
俺はお前をこんなちっぽけな星に!
それも氷の中に!お前をひとりぼっちで閉じ込めたまま何百万年も置き去りにしたんだ!俺はお前を探しに行くことだって出来たはずなのに!俺はお前をほっぽらかして何がしたいんだかわかんねぇ連中と戦ってただけじゃねえか!それでもお前だけ悪いのかよ!」
「スタースクリーム…声が大きいよ」
少しその声に圧されたようにスカイファイアーが言う。
スタースクリームはそれを無視してスカイファイアーの肩をつかむ。
そのまま自分の近くへ引き寄せた。
「お前が悪いなら俺様だって同罪なんだ。勝手に恨むだの恨まないだの言ってんじゃねえよ」
そしてスカイファイアーの目を見てゆっくり言った。
「俺はお前がしたこと含めて全部、お前が好きだ」
スカイファイアーはその言葉に少し戸惑うと、わずかに顔を赤らめて微笑む。
「スタースクリーム…ありがとう。
私も大好きだよ。君のことが」
その言葉にスタースクリームはフンと言ってそっぽを向く。
「たまになんだかしんみりしたこと言うなと思ったらよぉ…バカなことほざいてんじゃねえよ」
「ごめんね、スタースクリーム」
カリカリと頭をかきながらそう言うスタースクリームに
ふふふと笑いながらスカイファイアーはスタースクリームに言った。
二人の隣では
二輪のタンポポが風に揺れていた。