TFG1 擬人化
□泣けるのは、あなたの前だけ
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「すまんラチェット」
視界の隅で無責任な赤い髪の毛が土下座するのが見える。
無視する。
「すまん」
シカトする。
「すみませんラチェット先生」
…。
「おいラチェット」
「…はい?」
ぎろりと睨んでやる。
私より背が高くて体格のいいその男はばつの悪そうな顔で私に言った。
「なんか言ってくれよ」
「…言って良いのか?」
一瞬の沈黙。
口を開く。
「この脳筋赤毛熱血筋肉馬鹿クソブタ野郎いい加減学習しろこのブタ野郎毎回毎回戦場に出る度に怪我しやがって死にたいのか?あぁ?死にたいのか?お望みならリペア台の上で今すぐオールスパークの源に送ってやろうかじゃなきゃ麻酔なしで四肢切断してやろうかそうすれば戦場には出れないよなぁアイアンハイド?このブタ野郎」
「お前ブタ野郎って三回も言ったな!」
いきり立つアイアンハイドの眉間にレンチをぶんなげる。
ガスッ
「いっでぇ!この暴力軍医!」
「お前が負ってきた怪我より痛くないだろうが!」
毎回毎回戦場で怪我しやがってこの馬鹿警備員学習しろ。
ハイヒールを顔に叩きつけてやろうかと思ったが止めた。
こんなことをして怒ったってこいつには分からない…。
分かる訳ないんだ…!
馬鹿警備員…。
「なぁラチェットすまん、でも大丈夫だ。腕一本やられただけで命になんかかすりも…」
「じゃあお前一人でけがを治せるのか?お前さんがいくら優れた戦士だと言ったって、片腕でなにができるんだ!お前の言うとおり大丈夫なら、医者なんて必要ないんだっ!」
バカだ。
馬鹿だこいつは。
なにも分かっちゃいない。
「すまん、ラチェット」
目を伏せてアイアンハイドがいう。
「仕方ないんだ。俺が前に出なければ、ほかの奴らが傷つくから…」
違う。
「仲間を失う方が、自分が傷つくより辛いんだ」
違うってば。
「だから、許してくれラチェット。お前の手間を増やすつもりはないんだ」
「違う!」
怒鳴ってしまった。
「私は…私はお前さんが傷つくのがイヤなだけなんだっ…!」
傷を治すのなんて手間じゃないから。
でも治せるから良いんじゃないんだ、傷つくその姿を見たくないんだ。
なにも分からないの?
こんなにつらくて苦しいのは私だって同じなのに。
私のことはどうだって良いの?
お前は自分が死んでも良いの?
「お前なんか一生デスクワークにでもついてりゃ良いんだっ!」
傷つくのが好きなら、いくらだって傷つけばいいんだ。
私はお前の心を傷つける。
傷つける痛みを、お前は良く知ってるだろう?