短編

□動悸のわけ
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放課後。日直である私は担任から雑務を任されダンボールいっぱいに入ってある資料を地学準備室に置くため3階へ向かっていた。はっきり言って重い。重すぎる。今日は部活もないから早く家に帰って家でゴロゴロするつもりだったのだ。あのカツラ中年親父が、呪ってやる。そんな事を思っていると後ろから人の気配を感じ後ろを振り向いた。今から部活の人が多いのだから当たり前だが、ただ嫌な予感がしたのだ



「あら、気づかれちゃったー」
『……実渕』



後ろにいたオネエ口調の実渕玲央は語尾にハートが付きそうなくらいのテンションだった。正直言えばこの人は苦手だ。いつも何かしら私にちょっかいを出してくるのだ。


『…何か用?』
「廊下歩いてたらもりもりちゃんが見えたからついてきたのよ」

いつから後ろにいたんだ。

『……部活始まるんじゃないの?』
「始まるまで15分有るから大丈夫よ」
『ふーん。じゃ部活頑張って』


実渕から離れたかった。また何か仕出かす前に、そう思ってまだ途中だった階段を登り始める。それでもやっぱりダンボールは重い。重力なんてなくれなればいいのに。不意にダンボールが軽くなった。手元を見るとダンボールは無くなっていた。隣を見ると実渕がニッコリと微笑みダンボールを持っていた


『ちょ、返してよ』
「先生もバカよねー。こんな重い荷物女の子が持てるわけがないじゃない。」
『は?』
「これは男の仕事。」


驚いた。オネエの癖に軽々とダンボールを持つ姿を見るとやっぱり男子なんだなと思ってしまう。


「これは何処に運ぶのかしら?」
『ち、地学準備室』
「随分遠いのね」


全く女の子の事分かってないんだから、とかブツブツ言って実渕は軽々と階段を登っていく



トクン…トクン…



この動悸はなんだろう。いつも私に変なことをする実渕。どうやら今回も私は実渕に何かされたみたいだ。


「もりもりちゃん?」


私は実渕の服を掴んで、実渕の顔を見た。


『……あり、がと…。』


多分私の顔は赤いだろう。込み上げてくる熱を隠してくて顔を反らした。
この動悸の正体に気づくのはもう少し後の物語 。


end

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