とある時空の世界大戦


□「法の書」編
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学園都市のとある街中…
学生達で賑わうこの地に、学生達とは妙に風貌の違う男女が歩いていた。

「最大主教(アークビショップ)!護衛も無しで街中を彷徨くとはどのようなお考えなのですか!」

その男女の内の、身長は180cmを優に越える長身で黒い修道服を纏い、髪は赤く染め上げられた肩まで届くほどの長髪、そして目の下にはバーコードのような刺青、耳にはピアス、両手の全て指には指輪をはめている「不良神父」とでも表現できる男性が片方の女性の背後に控えながら問いかけた。

「だから、その名前で呼ぶべからずなのよ」

こちらの女性は洋風の服に日傘と西洋人らしい格好をしているが、彼女の髪は伸ばせば自身の身長の2.5倍はあるそうである。

「話なら聖(セント)ジョージ大聖堂で済むものを…」

「年がら年中あんな古めかしい聖堂にこもっているのは嫌だわ。それに、歩みつつも語れるのよ」

「まあ…構いませんが」

男性と古語が混ざった話し方をする女性は日本語で会話をしているようである。

「小さき男なのねステイル、むしろこの私と2人きりで歩ける状況を堪楽せんとはできないの?」

「…ローラ・スチュアート、1つお聞きしてもよろしいですか?」

「難きことね、何?」

ローラと呼ばれた女性の方はステイルと呼んだ男性の質問の許可を下した。するとステイルから飛んできた質問はローラが思っていたこととは全く違っていた。

「どうしてあなたはそんなバカな喋り方をしているんですか?」

「えっ…えっ?」

ステイルの問いに激しく動揺しながらローラはステイルに振り返った。

「えっ?おかしいの?本物の日本人にもチェックをいれて貰ってるのに!?」

「それは一体誰なんですか…」

「土御門(つちみかど)元春(もとはる)の奴なのよ」

「…奴を日本人の基準にしないでください」

どうやらローラは土御門という男に古語混じりな話し方を教えて貰ったようである。

するとローラは突然手元から手帳を取り出し、何かを書き込むとそれをステイルに手渡した。

「通信用の護符…」

どうやらこれを持っていれば声を出す事もなく会話が出来る、といった道具のようで、それはこれからは誰にも聞かれてはならない会話になる事を意味していた。

「(あなたは、「法の書」の名は知りたるわね?)」

「(魔導書の名ですか?
著者は確か、エドワード・アレクサンダー。原典はバチカン図書館に保管されており、誰にも解読不可能な魔導書だと…)」

「(そう、かの103000冊の魔導書を記録している禁書目録であってもね)」

「(っ…)」

禁書目録、つまりインデックスの名を聞いた時、ステイルは懐疑的でかつ怒りを含んだ視線をローラに向けた。

「(その魔導書を、解読出来る人間がいたとしたら?)」

「なんですって!?」

思わず声が出てしまい、周りの人々がざわざわとしているなかで、ローラは人差し指を口の前に置いてそれをステイルに見せた後、再び歩き出した。

「(その者はローマ正教の修道女で、名はオルソラ=アクィナスというそうよ)」

「(まさか…法の書を勢力争いの道具に?)」

科学の街、学園都市には広まっていないのだが、世界には十字教、俗にいうキリスト教が布教しており、その十字教の宗派により、それぞれが同じイエス=キリストを信仰していながら敵対関係を気付いてしまっている。

ステイルやローラが所属するのはその十字教の中ではイギリスを中心に広まった「イギリス清教」であり、俗にいうプロテスタントと呼ばれる者達である。

そして彼らの話の中に出たローマ正教は、その十字教の中でも最大の勢力の宗派であり、ローマ教皇傘下とバチカンを中心に広まった宗派である。

「(今のところそれはないわ、なぜならその法の書とオルソラ=アクィナスは盗まれてしまったのだから)」

「(えっ?)」

「さて、ここからは中で話しましょうかしら」

会話している間に、2人はある協会の前に辿り着いていた。





舞台は変わり、ここは学園都市第7学区のとある高校、ここには臨時処置として新たな学級が作られる事になった。

「ったくよー…なんで未来に来てまで勉強なんかしなきゃならねーんだよー!」

「仕方ないよ圭一君、便宜上は私達、ここの住人で学生なんだから」

「そうそう、まあ私もどっちかっていうと圭ちゃんと同意だったり…」

「魅音さんも圭一さんもだらしないですわよ!これからホームルームだと言うのに!」

「お姉も圭ちゃんも勉強は苦手ですもんねー♪」

「ボクはお勉強大好きなのですよ♪」

その臨時学級はどうやら圭一達部活メンバーの為に作られていたようだ。

「とりあえず当分の生活の補償のためには仕方ないわよ…まったく…」

霊夢はだるそうに呟いた。
部活メンバーだけではなく、霊夢もここの学生という扱いになっていたようである。

「あれ?前原さん達じゃないですか!」

「ホントだ〜!」

すると教室の外から圭一達にとって聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「冨田くん!岡村くん!久しぶりだなー!!」

小学生くらいの外見の男の子達はどちらもかつて雛見沢の学校で共に暮らしていた生徒達であった。

どうやら、雛見沢の様々な住人達がこの世界へと来てしまっていたらしく、彼らだけでなく他の生徒達も雛見沢で見覚えのある顔ぶれ揃いだったのである。

ただ、その中に1人だけ見覚えの無い人物がいた。

背丈は梨花や沙都子と大差なく、髪はピンク色の短髪の女子が、何故か教卓の前に立っていた。

「はーい!ホームルーム始めますよー!」

なんとその女子はまるで自分が先生であるかのように振る舞いだした。

「え?まだ先生来てないじゃーん」

「私が先生ですよー!!」
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