タンジョウビ

□キスして抱きしめて
1ページ/1ページ

俺、和希が好きだ。
和希のことが大好き。
和希のことが好きで好きで、いつも一緒にいてほしくて仕方がない。
触れたくてどうしようもない。
和希と深くキスしたらどんなだろうとか、抱きしめられたらどんなだろうって、いつも考えてしまう。
愛してるって言われたら、どんなに幸せだろうとか…。
和希に抱きしめられて、和希の胸で、和希の体温を感じながら、愛してるの言葉を囁かれたい。
でも、それはきっと俺の抱いた幻想でしかなくて。
俺も和希も男で、愛してもらえないのはわかってるんだ。
叶わなくてもいい。
それでもいい。
好きって気持ちを、和希に伝えたい。
好きって、ただひとこと。
和希の誕生日に…。
溢れ出しそうなこの思いを、和希に…。


「和希っ…」
誰もいない放課後の教室で、俺は和希と二人きり。
ついに、和希に告げる。
「和希…、和希、俺………」
好き、そのひとことが、なかなか言葉に出来ない。
覚悟していたはずなのに、フラれたら今までみたいにはできない現実がそこまで迫っている。
気持ち悪いって避けられる可能性さえある。
好きって言わなければ、友達としてそばにいられるのに。
だけど…だけど。
もう、限界だから。
本当に、好きって気持ちが溢れて零れてしまいそうだから。
胸が痛いから。
伝えさせて。
「和希が好き…」
沈黙が怖い。
和希の答えが怖い。
そして、想いが溢れて止まらなくて、言葉に変わる。
「和希が好き…、好き。好きだから…、和希が好きだからっ……」
だから…お願い。
俺を好きになって。
俺を愛して。
キスして抱きしめて。
愛してるって言って。
「好きだから…、好きだから…。だからっ…」
和希の力強い腕にグイッて引き寄せられて、たどり着いた先は、和希の胸の中…。
「啓太っ……」
愛しそうに俺を呼ぶ和希の声…。
すぐそばに感じる和希の体温。
和希の匂い。
俺…和希に抱きしめられてる。
「啓太…俺も、啓太のことが好きだよ…」
予想もしていなかった現実に、嘘かもしれないと思った。
これは夢かも。
本当は俺は今ベッドで寝ていて、自分に都合のいい夢をみているだけかも。
だって、和希も俺を好きなんて。
「か…ずき、和希…」
これは現実なのか?
和希も俺を好き?
確かめたくて腕をのばした。
和希の背中に手を回し、顔を胸に埋めた。
和希がここにいるって、夢じゃないって…、感じた。
「和希ぃ...」
「愛してるよ、啓太…」
そして、重ねられた唇。
フワリと、やわらかいキス。
和希のぬくもり。
和希の…。
「和希、俺も…和希を愛してるっ!」
キスして抱きしめて。
愛してるって言って。
もっと。
もっと...



fin.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ