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□つま先で立って
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私は子供。

貴方は大人。



『またお酒飲んだんですか?』
「うん〜。菜桜ちゃんも一緒に飲まない?」
『未成年だからいいです』
「ええー?」

お酒だって、飲めないの。
ついでに言うと、コーヒーも苦手。
好きなものはココア。
抹茶とかは飲めるけど、紅茶は苦手。
男の人が苦手。
恋愛経験はなし。
そんな、子供っぽい私。

『ほっぺも腫れてるし……。またぶたれちゃったんですか?』
「女の子って怖いよね〜」
『…………女なんて、そんなものです。
白澤様が浮気性なのがいけないんですよ』

大人っぽい貴方に合わせて、ちょっと大人ぶってみたり。
でも子供の私が大人ぶったって、大人びたセリフに聞こえない。

「そうなの〜?」
『そうですよ。ぶたれたくなかったらもっと女を大切にしてください』
「大切にしてるじゃない」
『捨てられるのが目に見えてます』

そう言って、床に寝そべっている彼に合わせて、しゃがみ込む。
すると、顔を上げた彼と視線が合った。
いつ逸らせばいいのか分からずに、お互いじっと見つめる。
ふと、手を伸ばしてみたくなった。
その腫れた頬を撫でてみたくなった。

「そう言えばさ〜」

だけどその声で、伸ばしかけた手が引っ込んだ。
引っ込めたら、急に恥ずかしくなって顔が赤くなった。

「菜桜ちゃんの好きな人のタイプとか聞いたことなかったけど、どんな人が好きなの?」

ニコニコと笑いながら、自然にそう聞く白澤様。
どんな人、かぁ……。

『ありのままの私を、受け入れてくれる人ですかね……。
背伸びしてる私を……等身大の私を、認めてくれる人がいいです』

ああ、そういう人がいい。
必死で背伸びしてる私に気付いて、視線を合わせてくれる人がいい。
踵の低い靴で、隣で笑っていてくれる人がいい。
貴方は絶対に、私の背伸びに合わせてしゃがんではくれないんでしょうけど。



つま先で立って
((私の背伸びに慣れないで。慣れてしまったら、私の足が痛くなっちゃうから))




*お題......「確かに恋だった」様

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