小さなお話
□カメラの先に
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「じゃあ、スホくん。次ラストね」
あたしがそう言うと
待ってくださいとあたしの隣に
スホくんが駆けてくる。
ふわっとスホくんの
人柄相応の優しい爽やかな匂い。
いい匂いがするなんて考えたあたしは
きっともう心奪われてたんだろうな。
「ねぇ、ゆいさん」
スホくんの吐息が
耳にかかってぞくっとした。
「僕だけ見てて」
え。
「ゆいさんのためだけに笑うから」
そう言ってあなた
(あたしの髪を優しく撫でた)
蘇ってきた感覚に思わず耳を塞ぐ。
身体の火照りがなかなか治まらない。
「おい、ミン仕事だぞー。」
あたしを呼ぶ声。
「あっ、はい!」
飛んでいた意識を呼び戻して
「今日はどこの?」
「確か...あの若い6人組の」
もしかして。
「.....会えるかな」
あたしは淡い期待を抱いて
スタジオへと歩みを進めた。
→あとがき