小さなお話
□幾度も繰り返す
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「イーシン」
「ん?何?」
そうあたしに柔らかく笑いかけるあなたは
何を考えてるの?
何くわぬ顔であたしを見て微笑んで。
「どうした、ゆい」
あなたがあたしの顔を覗き込めば
速まる心拍数に
どれだけあたしがイーシンを好きか
痛いぐらいに実感する。
「ねぇ」
真実を問おうとして
口を閉ざす。
あたしが離れられないから
きっとあたしは
イーシンがいないと息さえできない。
知ってるのよ
イーシンが他の女の人も愛していること。
あなたが本当の愛を知らないから
こんなことになったんだわ。
「好きよ、イーシン」
あたしがどれだけ愛を伝えても
イーシンには届かないの。
「俺も好きだ」
ロボットのような
あなたの口から紡ぎだされたオウム返しに
たくさんの女の人が惑わされたに違いない。
結局あたしもそのひとり。