□南瓜
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リリス様。
レディ・リリス様。

ベルゼブブ様の奥さま
とても美しい人。



仕事の用でEUに来たところで偶然お会いした。
お茶に誘われ、時間にも余裕があったのでご一緒させてもらったのだけれど…あれ、私はどうしてこんな格好してるんだっけ。




「とっても似合うわ!!」

「は、はぁ…」



オレンジと黒の日頃着ないようなお召し物。
かぼちゃをイメージしたドレスなんだとか…。


「リリス様、足が寒いのでもう着替えてもいいでしょうか…」

「あら駄目よ。せっかくのハロウィンなんだもの」

「ハロウィン…」


ハロウィン。外国のお祭り。
お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ、という台詞が飛び交う日。

かくいう私も、リリス様に言われた。
今日はハロウィンということをすっかり忘れていた私が、お菓子を持っているはずもなく…悪戯と称してこのドレスを着させられた。

しかも膝が見えるほどの短さ。
足が寒いですリリス様。
そしてなにより、こんな姿をあの方に…鬼灯様に見られたら、どうなることやら。

ちら、と時計を見る。
もうそろそろ帰り始めなければ。


「あの、リリス様。そろそろ御暇しようと思うので…私の着物はどこにあるのでしょう?」

「洗濯中よ」

「へ?」

「洗濯中」










視線が痛いです。
EUではハロウィンということで仮装をしている方も多くあまり気にならなかったのですが…。
ここは日本。地獄。
仮装している人なんてもちろん居らず、さっきから視線がぐさぐさぐさぐさ…



着物は洗濯中ということで、裸で帰るわけにもいかず、リリス様に着せられたハロウィン用のドレスを着たままでの帰社。


は、恥ずかしい…。



「こんな姿で、鬼灯様に会わなきゃいけないなんて…」

そうだ。一度自室へ帰ろう。
そして着替えてくれば、大丈夫。


「このままじゃ笑われる…」

「随分と可愛い格好をしてますね」

「っ!?!?」



心臓が飛び出そうなほど驚くとは、まさにこういうことだと思う。



「ほ…鬼灯様…」

「桜がそんな服を着るとは」

「いえ、これは…」

「あぁ、ハロウィンですか」


あれ。


「鬼灯様ハロウィンご存じなんですか」

「当り前でしょう」

「意外です」

「悪戯が許される日ですからね」

「そこですか」


まぁ、確かに。
鬼灯様が好みそうなイベントではある。


「困りましたよ。リリス様に悪戯でドレス着せられるんんですから…」

「それは災難で」

「まったくです。だから、今から着替えてこようと…」

「え?」

「はい?」

「着替えるんですか?」

「当たり前じゃないですか」


寒い上に、…恥ずかしい。
それなのに、少し驚いたような顔をした鬼灯様は何かを思いついたようにポンと手を叩いた。


「桜」

「な…なんですか」

「Trick or treat」

「……え」


発音よく聞こえたそれはリリス様が私に言ったものと同じ言葉。
ていうか鬼灯様発音良すぎやしませんか。



「鬼灯様…ここは日本ですよ」

「お菓子、ないんですか?」


つい、逃げの体勢に入る


「日本ですから…」

「悪戯しますよ」

「え」



やばい。
鬼灯様の目、マジだ。




「悪戯させなさい」


「嫌です!!!」





全力で逃げた。

やっぱり、鬼灯様にこの格好で会うんじゃなかった。




END

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