□夏なかば
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少し寂しいですが
それも有りです。






「もうすぐお盆ですね」

「あ…もうそんな時期ですか」




お盆か。

最近忙しくて忘れていたけど。


今年も地獄では毎年恒例お盆祭りのあとに現世にいった亡者たちを帰ってこさせなければならない。


かくゆう桜にもお盆祭りに関する書類がきていた。
間違いなくお盆はお祭りには行けるものの、その夜は残業漬けだろう。




「しばらく桜に会えなくなりますね」


「しばらくって…たかが2、3日でしょう」


「私からしてみれば千夜に値します」


「鬼灯様は大袈裟ですよ」





とんとん、と書類を整えて机に置く。

現世に行くのは久しぶりだ。
現世は楽しい。
行くたびに景色が変わるから。




「現世は蝉時雨でしょうね」


「そうですね。最近の現世は夜も熱い…」


「疲れが倍増しちゃいますね」



「ですね。…そういえば、桜」


「はい?」


「盂蘭盆の時間帯は空いてますか?」


「あ…えっと、空いてないです」



あからさまに不服そうな顔をする鬼灯。
きっと一緒に回ろうというお誘いだったのかもしれない。


「友達と一緒に出店を回ろうって約束をしました」


ごめんなさい、と付け加える。


「彼氏を差し置いて友達と行きますか」


「ご、ごめんなさい」


「いえ、せっかくの息抜きですから。楽しんで来てください」


「あ…ありがとうございます」





もう少しお誘いが早かったらよかったのに。
ぼんやりとそんなことを思いながら桜は思いついた。


「鬼灯様!」


「はい?」


「お盆が明けたら…動物園にでも行きませんか」


「動物園ですか?」


「お盆祭りはいけませんが…お盆が明けたら、なんて…」


「いいですね」


「本当ですか!?」


「現世デートですね」


「え?あ…はいっ」




忙しいあとの楽しみができました。



(さっそく閻魔大王に有休とってきます)


END

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